アフターピル市販で「性が乱れる」と叫ぶ人の勘違い 日本の医療、年配男性の「有識者」が決めている
そもそもなぜ日本では、アフターピルの入手が困難な状態のまま、ある種"聖域"化されてきたのか。OTC化が決して早くはなかったアメリカでさえ、議論に決着がつき解禁されたのは2013年のこと。このままでは日本は10年以上の遅れを許しかねない。
2017年にOTC化が見送られた際の反対側意見が、議事録(厚生労働省、2017年7月26日第2回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議)に残されている。
「この薬品が避妊の目的であることを悪用する」
「簡単に避妊できることを根拠に、避妊具を使うことが減ったり、性感染症が増える」
「例えば13歳や14歳でも買う可能性が出てくる時代になっていますから、そういうときにどうするか」
「もしかすると、消費者の方は、(中略)常備薬的に自宅に置いておく可能性が出てくる」
同じくアフターピルの初診からのオンライン診療を「時期尚早」とする人々の意見も、検討会の議事録(厚生労働省、オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会)から読み取れる。
「日本でこれだけ若い女性が性に関して知識がない状況で、(中略)責任が持てないと思う」
「本当に簡単に若い女性が、ここでもらえるという感じでやられたら(=オンライン処方させたら)、これは非常に悪用になってしまうし、あるいは転売などという話も出てくるかもしれない」
ほかにも薬剤師など提供側の理由は挙げられているが、少なくとも利用者側については、心配しつつもその実、「知識が足りないし、信用できない」と言っているに等しい。対面診療を死守しなければ「若い女性の性が乱れる」とでも言わんばかりである。
科学的な議論でなく、ただのおせっかい?
だが、そうした懸念のほとんどは、ただのおせっかいにすぎない可能性がある。
さまざまな避妊方法が無償提供された場合でさえ、性感染症は増えず、複数の性的パートナー男性がいる女性の数もむしろ減少した、という2014年のアメリカの研究結果がある。14〜45歳女性9256人(6割が25歳未満)を対象とした2~3年にわたる調査で、開始1カ月の時点で複数の男性パートナーがいると答えた被験者は5.2%にとどまり、しかも1年後までには3.3%に減少していた。