最新記事

コロナストレス 長期化への処方箋

子供だってコロナストレスを感じている

UNCHARTED TERRITORY

2020年8月27日(木)18時30分
レベッカ・オニオン

学校や友達付き合いのストレスから解放されて不安や鬱が軽くなった子もいる PORTISHEAD1-ISTOCK.

<自宅待機による子供への影響は性格や年齢によってさまざまだが、大事なのは親が精神的に安定していることだ。本誌「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より>

今年3月、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、自宅待機に入った6日目のこと。3歳の娘との散歩から戻るなり、夫が言った。「お隣さんに会ったんだけど、この子のおしゃべりが止まらなくてね。どうやら僕らが相手じゃ物足りないみたいだ!」

コロナ禍で子供同士の「付き合い」が断たれたことに、罪悪感と不安を覚えているのは、筆者たち夫婦だけではない。無理もないだろう。学校は勉強だけでなく、先生や友達との交流を通じて心身の成長を育む場所だと、私たちは散々聞かされてきた。だとすれば、学校に行かないことは、子供の社会化の機会が奪われていることにならないのか。

20200825issue_cover200.jpg

「『友達に会えなくて、寂しいに違いない』と私たちは思いがちだが、全ての子供がそう感じるわけではなさそうだ」と、児童心理研究所不安障害センター(ニューヨーク)のシニアディレクターを務めるレイチェル・バズマンは語る。「子供によって感じ方は大きく異なる」

ペンシルベニア州立大学児童研究センターのカレン・ビアマン教授(心理学)によると、筆者の娘のように幼稚園に入る前の子供にとって、友達とは「一緒に遊ぶ人」だ。これに対して学齢期の子供にとって、友達は友情や信頼の源になる。

「幼児期よりも学齢期の子供のほうが、友達は人生で重要な存在になっているから、社会的隔離の影響は大きい」と、ビアマンは語る。とりわけ10代の子供は、最も「苦しみ、動揺している可能性が高い」。

重要なのは、親が自分の喪失感や孤独感を子供に投影せずに、子供の本当の気持ちを理解しようとすることだと、複数の専門家は言う。思えば、わが家の娘と隣人のおしゃべりに関する筆者夫婦の解釈も、親の心情を投影しているにすぎない。

もしかすると本人は、保育施設に行くために早起きをしなくていいことや、一日中、家族といられることを喜んでいるかもしれない。「学校や友達付き合いのストレスから解放されて、不安や鬱が軽くなった子もいる」と、ハーバード大学系列のマサチューセッツ総合病院のエレン・ブラーテン学習・感情評価研究(LEAP)部長は語る。

だから、新型コロナの自宅待機をどのように感じたか、子供に直接聞いてみるといい。ただし、親の解釈を押し付ける誘導質問ではなく、子供が心情を素直に吐露するきっかけとなる最小限の質問にとどめるべきだ。「子供の気持ちに好奇心を持つことが重要だ」と、バズマンは語る。

【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響
【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中