最新記事

トラベル

コロナショック後の旅行は「3つの点」で大きく変わる インバウンドの終わりと始まり

2020年6月15日(月)17時15分
岡本 岳大(wondertrunk & co.代表取締役共同CEO、デスティネーションプロデューサー) *東洋経済オンラインからの転載

もう1つの可能性は「教育」でしょう。レジャーやバカンスだけであれば、近場の観光地でもよいと思ったとしても、学びを通した自己変革のため、あるいは子どもの教育のため「自国にいては得られない気づきと成長のために動く」というのは、強い動機になりえます。

Stay at Homeの期間に、National Geographic Travelerが「Stay Inspired(インスパイアされ続けよう)」というコンテンツを発信したり、Airbnbが瞑想、料理教室、文化講座「オンラインでの体験」のプログラムを充実させてきましたが、新型コロナは「旅と学びの距離を近づけた」と言えるかもしれません。

もちろん、「大自然の中に行きたい」「解放的なリゾートに行きたい」といった大きなニーズも世界共通であるでしょう。ただ、わざわざ日本に来てもらうことを考えると、「旅人の自国ではできない特別な目的や学び」を提供していくための準備は、今後の日本のインバウンドのヒントになりそうです。

「サステイナブルツーリズム」を構築する機会に

②クリーン、サステイナビリティ、旅先を選ぶ基準が変わる

旅先を選ぶときには、観光コンテンツの魅力、価格、アクセスなどは重要な要素ですが、新型コロナの後には別の基準も重要になります。

やはり「クリーン(清潔)」というキーワードは欠かせないでしょう。例えばシンガポールでは、政府観光局が中心になって「SGクリーン」という認証制度が始まりました。

ホテルの場合、室内の衛生状態、温度や消毒の回数、従業員の呼吸器の症状の確認などの基準が設けられるそうですが、このような制度が各国で導入され、安全と信頼をPRすることが必須になります。

元Virgin Atlantic広報部長のコンサルタント、Paul Charles氏は清潔のキーワードはとくに都市デスティネーションで重要になると指摘します。公共交通機関や室内アトラクションにおける「クリーンな空間とプライバシーの確保」がキーになりそうです。

もう1つは「サステイナビリティ(持続可能性)」です。フランスのメディアUsbek&RicaのPablo Maillé氏は「エコツーリズムやサステイナブルツーリズムが、コロナ危機後の良心的な選択として再トレンドになる」と指摘します。

もともと、2015年に国連がSDGs(持続可能な開発目標)を発表した頃から、こうした旅への関心は高まっていましたが、とくにバルセロナ、ヴェネツィア、京都のような人気エリアではオーバーツーリズムが課題になっていました。

あまりに多くの外国人観光客が来ることで、住民の生活や、文化財、自然環境に悪影響が出ているので、規制をしながら「持続可能な観光」を目指すという動きです。

この「オーバーツーリズムへの規制」という視点と、コロナ後に「観光客の密集を避ける」という対応があいまって「サステイナブルツーリズム」の議論が活発化しそうです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中