コロナショック後の旅行は「3つの点」で大きく変わる インバウンドの終わりと始まり
もう1つの可能性は「教育」でしょう。レジャーやバカンスだけであれば、近場の観光地でもよいと思ったとしても、学びを通した自己変革のため、あるいは子どもの教育のため「自国にいては得られない気づきと成長のために動く」というのは、強い動機になりえます。
Stay at Homeの期間に、National Geographic Travelerが「Stay Inspired(インスパイアされ続けよう)」というコンテンツを発信したり、Airbnbが瞑想、料理教室、文化講座「オンラインでの体験」のプログラムを充実させてきましたが、新型コロナは「旅と学びの距離を近づけた」と言えるかもしれません。
もちろん、「大自然の中に行きたい」「解放的なリゾートに行きたい」といった大きなニーズも世界共通であるでしょう。ただ、わざわざ日本に来てもらうことを考えると、「旅人の自国ではできない特別な目的や学び」を提供していくための準備は、今後の日本のインバウンドのヒントになりそうです。
「サステイナブルツーリズム」を構築する機会に
②クリーン、サステイナビリティ、旅先を選ぶ基準が変わる
旅先を選ぶときには、観光コンテンツの魅力、価格、アクセスなどは重要な要素ですが、新型コロナの後には別の基準も重要になります。
やはり「クリーン(清潔)」というキーワードは欠かせないでしょう。例えばシンガポールでは、政府観光局が中心になって「SGクリーン」という認証制度が始まりました。
ホテルの場合、室内の衛生状態、温度や消毒の回数、従業員の呼吸器の症状の確認などの基準が設けられるそうですが、このような制度が各国で導入され、安全と信頼をPRすることが必須になります。
元Virgin Atlantic広報部長のコンサルタント、Paul Charles氏は清潔のキーワードはとくに都市デスティネーションで重要になると指摘します。公共交通機関や室内アトラクションにおける「クリーンな空間とプライバシーの確保」がキーになりそうです。
もう1つは「サステイナビリティ(持続可能性)」です。フランスのメディアUsbek&RicaのPablo Maillé氏は「エコツーリズムやサステイナブルツーリズムが、コロナ危機後の良心的な選択として再トレンドになる」と指摘します。
もともと、2015年に国連がSDGs(持続可能な開発目標)を発表した頃から、こうした旅への関心は高まっていましたが、とくにバルセロナ、ヴェネツィア、京都のような人気エリアではオーバーツーリズムが課題になっていました。
あまりに多くの外国人観光客が来ることで、住民の生活や、文化財、自然環境に悪影響が出ているので、規制をしながら「持続可能な観光」を目指すという動きです。
この「オーバーツーリズムへの規制」という視点と、コロナ後に「観光客の密集を避ける」という対応があいまって「サステイナブルツーリズム」の議論が活発化しそうです。