リモートワークで「在宅社畜」中国の働き方は日本よりマシ?
BETTER THAN JAPAN?
深夜、オフィスビルの窓辺にたたずむ。成長神話に陰りも(上海) QILAI SHEN-BLOOMBERG/GETTY IMAGES
<コロナ危機の在宅勤務が突き付ける「働く」と「休む」の境界線。お隣・中国の実情を見ると、彼らは西欧を見て羨みつつハードな日々を送っているようだが......。本誌「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集より>
「弾幕」「秒殺」「攻略」......漢字文化を共有する中国には近年、日本から渡った言葉もいろいろある。特に、最近の若者が使う語には日本から輸入されたものが多く、その比較的新しい例が「社畜」だ。1990年に日本で生まれたこの言葉は、2018年の日本のテレビドラマ『獣になれない私たち』が中国でヒットしたのをきっかけに一挙に知られるようになったとされる。
しかし、この言葉が流行したのはドラマの影響だけではない。中国は元来、日本と同等かそれ以上に休みが少ない上、ここ数年は景気の減速感が日増しに強くなっている。どの会社も業績への圧力は強く、むちゃな成長計画達成のために従業員が過剰に働かされがちな一方、逃げようと思っても以前のように気軽に転職先が見つかるわけでもない。そうした時代の気分に、社畜という言葉はよくマッチしたのだ。
2019年はその軋轢が表面化した年だ。3月頃から始まったIT企業の若手プログラマーたちによる「996(朝9時から夜9時まで、週6日の勤務)」を強制する企業の告発、それに対する馬雲(ジャック・マー)をはじめとしたIT業界の大物の「成功を手に入れるためには、ほかの人と同じように5時に帰るような生活をしていては駄目だ」という根性論的な発言、それへの反発による炎上と、中国社会全体を巻き込んだ大騒動になった。
中国でも労働法や労働契約法などの法律で、超えてはいけない業務時間(1日8時間、週44時間)は定められている。だが実際は機能していない場合が多い。景気がよく、給料が毎年大幅に上がればそれでも黙っていたものが、給料も上がらず残業代も出ず、昼夜問わず働かされて、要らなくなったら残酷な方法で捨てられる......となれば、声を上げる人は出てくる。
長期休暇の裏の過酷な実態
祝日も日本と比べると、数の上では中国のほうが多いように見える。春節と国慶節という年に2回の長期休暇も目立つ。しかし実は長期休暇前後の週末は調整日として出勤になるので、実数は日本とほぼ同じだし、企業ごとに付与される有給休暇も日本より少ないことが大半だ。
加えて休日出勤は一般的にサービス残業扱いか、よくて残業代支給。一応は存在する代休が付与されることも少ない。その上、春節は周囲のプレッシャーから帰省がほぼ義務になっている人が多く、自分で自由に使える休暇は多くないのだ。