最新記事

0歳からの教育 みんなで子育て

どう違う? 日本・韓国・中国「祖父母の孫育て」体験記

IT REALLY DOES TAKE A VILLAGE

2020年3月26日(木)18時10分
李娜兀(リ・ナオル、国際交流コーディネーター・通訳)

magSR200326_2.jpg

共働き世代が祖父母を頼る韓国では孫育てのしんどさが話題に DBIMAGES-ALAMY/AFLO

これを韓国との比較で考えてみると、日本では韓国に比べて同居しながら孫育てをするケースが少ないということも、負担感の低さにつながっているのかもしれない。調査の仕組みが違うため単純に比較はできないが、韓国の場合、祖父母と孫の同居率は20 %を超えるが(2015年韓国統計庁調査)、日本は6.7%(2015年第一生命経済研究所調査)というデータもある。当然、同居のほうが祖父母世代、父母世代共にストレスを感じる可能性は高まるだろう。ちなみに韓国でも、同居での孫育ての割合は減る傾向にある。

また、世代にもよるが、一般的に韓国人よりも日本人のほうが、家族といえども一定の距離を置きながら付き合うということに慣れている面があるように思える。

個人的な経験を持ち出して恐縮だが、長女が生まれた17年前は、夫の仕事の都合で福島県に暮らしつつ東京都内の大学院に通っていた。母と義母が交代で子供を見てくれたが、生後数カ月の娘を義母に預けて家を出るときの、不安と申し訳なさの入り交じった思いは忘れられない。しかし、その後、何度も義母に娘を見てもらったが、教育方針などで意見の食い違いを見た記憶がない。エネルギッシュで明るい義母は私とは適切な距離を保ちながら、孫娘を自転車に乗せて近所にある公園を回りながら遊んでくれたものだった。

「村全体が関わる」ことの意味

一方、昨年の世界銀行統計によると、女性の就業率は日本が51%、韓国は53%と同程度だが、中国は61%と高い。社会主義の仕組みの中で、従来から夫婦共働きが一般的だったためだと考えられるが、0~3歳児を持つ中国人女性の悩みも深いようだ。

中国のインターネットを見ると「産休は半年しかもらえず、父母は退職前で面倒を見てくれず、幼稚園は3歳から。私はどうすればいいの? 仕事を辞めないといけない?」といった若い母親の書き込みが目につく。中国も子育て関連の公的支援が充実しているとは言えないようだ。

天津市に住む30代の知人夫婦の場合は、4歳の長男と1歳半の長女とマンション暮らし。夫婦とも公的機関で働いているので、長男の幼稚園の送り迎えと長女の面倒は、祖母に頼っている。とはいえ、体力面でも同居による精神面でも負担が大きいため、母方の祖母が湖南省から半年、父方の祖母が山東省から半年と交互に来ているのだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イスラエル、ガザ巡る国連職員の中立性に疑義 幹

ビジネス

米アメックスがプラチナカード刷新で3500ドル追加

ビジネス

午前の日経平均は続伸、ハイテク株主導で最高値 一巡

ワールド

ウクライナ、ポーランド軍に対ドローン訓練実施へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中