最新記事
戦争の記憶

「時には〈怖い〉とすら思ってもらいたい」──櫻井翔が『徹子の部屋』戦争特番で語った戦争を伝える意味

Passing the Torch of Memory

2024年8月9日(金)10時30分
小暮聡子(本誌記者)

newsweekjp_20240802052701.jpg

櫻井は黒柳に、戦時中に米軍が日本国民に対して作ったビラを見せる。複数の都市への爆撃予告と避難を呼びかける内容だ ©TV ASAHI

──番組の中では、誰もが知る芸能界のスターたちから、黒柳さんが生々しい戦争体験を聞き取ってきた映像が紹介される。

過去の映像を見ていて、聞き手である徹子さんも時に言葉を詰まらせたり、涙されたり......やっぱりつらいじゃないですか。ご自身もあの時代を生きてきて、なお聞き続けるということは、時に自分の心もえぐられることもあると思う。


それでもこうして記録に残るものを積み重ねてこられたことには、ある種の執念というか、思いの強さを感じる。

──番組の中で、櫻井さん自身も戦争体験者の「孫世代」に取材をし、自分と同世代である彼らが、絵画や映画を通して祖父の戦争体験を伝える活動を紹介する。

同じ世代で戦争と向き合っている彼らに会って、めちゃくちゃ心強い仲間を見つけた気持ちになった。それと同時に、恥ずかしくもなった。自分は全然、(彼らの域に)至っていないなと。うれしいし心強いというのが半分と、やられた! すごい! という気持ちが半分。それらを総じて、うれしかった。

──孫世代の彼らは、戦争を体験していない自分が伝えることについて、悩みながらやられているというのが伝わってきた。櫻井さんも、以前本誌にご自身の祖父と大伯父についての戦争の記憶について寄稿した際、同じような葛藤を語っていた。

共感するところもありつつ、悔しかったのは、彼らはおじいさんから直接話を聞いているんですよね。そこには圧倒的な違いがある。

彼らは実際に祖父の苦しみを聞いているし、たぶん自分の中に相当落とし込んでいる。だからこそ、あれほどの体験を自分が代弁していいのかという葛藤がある。僕は祖父から直接、戦争体験を聞けていないので、そこは明らかに違う点だった。

──実際に聞いているからこそ、伝えることへの思いも生まれる。今は、戦争を知る人に話を聞ける最後のチャンスでもある。

本当に、この数年で大きく変わってしまうかもしれない。一方で、ああやって映像に、あるいは活字に残しておけば、いつでも引き出しは開けられる。残しておくということが重要だとも思う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:FRBの新予測、中間選挙で政権後押しへ 

ワールド

自衛隊制服組トップ、レーダー照射で中国に反論 「対

ビジネス

インタビュー:26年も日本株の強気継続、日銀政策の

ワールド

アングル:米政権の120億ドル農家支援、「一時しの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中