「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界で愛される「これだけの理由」

WHY ANIME IS LOVED THROUGHOUT THE WORLD

2024年5月1日(水)14時10分
数土直志(すど・ただし、アニメーションジャーナリスト)

newsweekjp_20240501032354.jpg

宮崎駿は2014年にアカデミー賞名誉賞を受賞 KEVIN WINTER/GETTY IMAGES

それでも現在の日本アニメ人気の世界的な過熱は、かなり様相が異なる。とにかく視聴者の数が多い。理由の1つは、世界的な映像配信プラットフォームの普及にある。

世界で2億6000万世帯の契約を持つネットフリックスの視聴者の半数が、過去1年間に日本アニメを見ているという。日本アニメ専門の配信サイト、クランチロールの有料会員は1300万人を超える。日本アニメは動画配信により、新たな視聴者につながるルートを手に入れた。

日本動画協会が発表する日本を除く世界の日本アニメ市場の規模は、12年の2408億円が22年には1兆4592億円とおよそ6倍に伸びた。これは、日本アニメの世界配信拡大とほぼ並行して起きている。

もう1つファンが増えている理由は、世代を超えて積み重ねられた認知度にある。それぞれの時代のヒット作は異なるが、60年代にアニメを体験した世代を筆頭に、アニメを子供の頃に見た人たちは既に3世代にわたる。かつては強かったアニメへの偏見もなくなってきた。

日本アニメの受け取られ方は、世代、そして国や地域によっても大きく変化している。60年代から00年代までと現在の一番の違いは、以前の日本アニメの活躍の中心がテレビだったことにある。ただし、テレビでは作品がゆがみを持って伝えられた部分もあった。

かつて海外の子供たちの多くは、日本のアニメ番組を日本製とはほとんど知らずに楽しんでいた。フランスやイタリアを席巻した『UFOロボ グレンダイザー』は、『ゴルドラック』と名前を変え、現地語の別の主題歌が付けられた。

高橋陽一の漫画が原作の『キャプテン翼』が欧州から南米、中東まで広く人気だったことはよく知られている。ジネディーヌ・ジダン(フランス)をはじめ、本作を見てサッカーを目指したという海外有名選手も少なくない。

しかし主人公・大空翼の名前は、フランスではオリーブ、イタリアではオリー、中東ではマジドだ。

日本アニメが海外で多く放送された理由は、そもそも00年代まで世界でテレビアニメを量産できる国がアメリカと日本にほぼ限られていた事情がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中