最新記事

音楽

サブカルの域を越え、紅白にも続々登場 今から聴きたい大人におすすめのボカロ曲&歌い手は?

2022年12月30日(金)10時00分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)

ボカロ文化は、日本の保守層にも無視できないカルチャーとして認知されていきます。15年にはNHK紅白歌合戦で、今日でもボカロ曲を象徴する楽曲として知られる『千本桜』を出場34回のベテラン歌手・小林幸子が熱唱します。

09年前後よりボカロP・ハチとして活躍していた米津玄師は、18年の紅白にシンガーソングライターとして出場しました。歌唱した『Lemon』のミュージックビデオ(MV)は、21年9月にYouTubeでの再生回数が7億回を突破し、「日本人アーティスト史上最高再生回数」を更新し続けています。

ボカロPのAyaseがコンポーザーとして参加する2人組ユニット「YOASOBI」は、20、21年に紅白に出場。22年12月にビルボード・ジャパンが発表した「歴代ストリーミング総再生回数(18年3月から22年12月までの各種の有料音楽配信サービスなどを集計)」では、20年の紅白で歌唱した『夜に駆ける』が8.9億回で1位となりました。

21年に歌い手として初めて紅白に出場した「まふまふ」は、今年6月に単独の歌い手としては初めて東京ドーム公演を成功させました。紅白で歌唱したカンザキイオリ作『命に嫌われている』は22年末現在、YouTubeで1億3000万回再生を突破しています。

30代以上の音楽ファンが定着しない理由

このように躍進を続けるボカロ文化出身者ですが、30代以上の大人の音楽ファン層には、今でも浸透しているとは言い難いものがあります。

理由はいくつか考えられます。まず、人気の出たボカロPや歌い手はシンガーソングライターやプロ歌手としてメジャーデビューをし、ボカロ業界を離れる場合が多いこと。「ネット時代に現れた音楽家への新たな登竜門」という見方もできますが、プロになった後もボカロPや歌い手として、質、量ともに投稿し続ける者は稀です。

次に、特に歌い手の場合は、アマチュアが気軽に歌唱を投稿して視聴者とのコミュニケーションを楽しむことから始まるため、キャラクターが重視され、歌の上手さは二の次といった面があること。活動者と視聴者の距離が近いために「身近なアイドル」になりやすく、他人の楽曲を借りた歌唱動画だけではほとんど収入にならないためにゲーム実況などのYouTuber活動を重視する歌い手も多いため、従来の音楽ファンは戸惑うこともあるかもしれません。

さらに、聞き慣れないうちはボーカロイドの人工的な音声が取っ付きにくいことも理由の一つでしょう。その場合は、歌い手によるカバーでボカロ曲の楽曲の良さを楽しむのが早道です。けれど、音楽編集ソフトによって人間の歌唱も加工修正が可能なので、「ライブで生の歌を聞いたら、思った以上に下手でがっかりした」と不名誉な評価を受ける歌い手も少なからずいます。このような点も、歌唱力を重視したいファンを引き付けるのが難しい要因かもしれません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン紛争巡る公聴会開催を、米上院民主党が要求

ワールド

米韓軍事演習、地域の安定損なう─北朝鮮の金与正氏=

ワールド

英野党党首、国王の訪米中止主張 「トランプ氏は英国

ワールド

トランプ氏、イランに警告 ホルムズ海峡封鎖なら「2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目のやり場に困る」密着ウェア姿がネットを席巻
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 10
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中