サブカルの域を越え、紅白にも続々登場 今から聴きたい大人におすすめのボカロ曲&歌い手は?
舞浜アンフィシアターで開催された2014 MTV Video Music Awards Japanに出演した初音ミク(2014年6月) Yuya Shino-REUTERS
<ボカロP・ハチとして活躍していた米津玄師、ボカロPのAyaseが参加する2人組ユニット「YOASOBI」、歌い手として初めて紅白に出場した「まふまふ」──今日の日本の音楽シーンに大きな影響を与えるボカロ文化の成り立ちと、入門におすすめの楽曲・歌い手を紹介する>
ボカロP、ボカロ曲、歌い手──。「ボカロ文化」特有の言葉を耳にしたことはあっても、10~20代の若者向けサブカルチャーのイメージが強く、80~90年代J-POPやバンドブームに触れた"かつての若者たち"は自分とは馴染みが薄いものと思っているかもしれません。けれど最近は、「音楽番組で取り上げられていた」「たまたま耳にしたら印象的だった」などと、気になっている"大人たち"も多いのではないでしょうか。
ボカロPとは、VOCALOID(ボーカロイド)などの音声合成ソフトで歌声を付けた楽曲(ボカロ曲)を制作して発表する作曲家を指します。歌い手とは、既存の曲を自ら歌ってカバーした動画をネット上に投稿している人たちのことです。もともとはアマチュアシンガーを示していましたが、通常の人には出せないような広い音域や早口の曲が多い「ボカロ曲」にチャレンジして人気を集め、大手レコード会社からメジャーデビューを果たした歌い手もいます。
近年は、ボカロ曲の作り手と歌い手は、ネットカルチャーやサブカルチャーにとどまらず、日本の音楽シーンに大きな影響を与えています。年末のNHK紅白歌合戦にも2018年以来、ボカロ文化の出身者が相次いで登場しています。今年も、歌い手出身で「22年の音楽シーンの顔」とも言える存在となったAdoが、劇場版アニメ『ONE PIECE FILM RED』で歌唱キャストを務めた登場人物「ウタ」の名義で出場します。
これからボカロ文化に触れてみたい大人のために、ボカロ文化の成り立ちを振り返り、入門としておすすめの楽曲、歌い手を紹介しましょう。
「参加型のサブカルチャー」として発展
かつては音楽活動をしたければ、自分で楽器を演奏したり、バンドメンバーを募ったりしなければなりませんでした。さらにプロのミュージシャンになりたければ、ライブ活動やデモテープで音楽関係者の目に留まる必要がありました。
ところが、2000年代になって家庭用PCやスマホが普及すると、誰もが音楽ソフトを使って自動演奏や作曲が容易にできる時代が到来しました。さらに、大手楽器メーカーのヤマハがVOCALOIDを03年に発表すると、歌声すらも簡単に合成し、パソコン上で楽器と同様に扱えるようになりました。
インターネット回線の容量や速度も、急速に進歩しました。作成した楽曲は、ニコニコ動画やYouTubeなどの動画投稿サイトに誰もが自由に投稿できるようになり、視聴者からの感想や評価も簡単に得られるようになりました。
とりわけ、07年に「VOCALOID2 初音ミク」が発売されると、可愛らしい歌声やイメージキャラクターも相まって人気が爆発。初音ミクが歌う多数のボカロ曲が、ネット上に投稿されます。同時に、ボカロ文化は、投稿されたボカロ曲に対して、視聴者がコメントしたり、歌ってみたり、ファンアートの制作をしたりするなど、積極的に関わる「参加型のサブカルチャー」として若者に支持され、発展していきます。
その後、ボーカロイドの英語版も作られたことで、ボカロ人気は海外にも浸透します。初音ミクはボカロ文化のアイコンになり、11年にGoogle ChromeのCMに登場したり、14年にはレディー・ガガのツアーに参加したりしました。