日本語教育機関をネットワークでつなぎ、さくらの花を世界中に咲かせる
イギリス――「世界市民」を育てるため日本語も選択肢に
一方、2016年に中等教育機関としてさくらネットワークに加盟したのが、イギリスにあるダートフォード・グラマースクール。創立は1576年。地域の優秀な生徒が集まる学校です。同校の特徴は、「世界市民」の育成をミッションに掲げ、言語教育に力を入れている点です。世界共通の大学入学資格および成績証明書を与えるプログラム「IB(International Baccalaureate)」の理念に基づいてカリキュラムを提供している学校でもあります。IBには母語話者/非母語話者向けの日本語の試験が含まれます。
同校が日本語教育を始めたのは1995年のこと。中等教育修了一般資格である「GCSE(General Certificate of Secondary Education)」を得るための試験を、ふたつの外国語(日本語か中国語、そして仏・独・西・ラテン語のどれか)で受けることを課しており、その理由を、同校で日本語教育を担当するケイティ・シンプソン先生はこう話します。「当校の理念に根付くのは、コミュニケーションの力と異文化への敬意です。平和な世界をつくる国際市民となるには、多様性をもつことが大事。ですから言語教育を重視しますし、複雑な意味をもつ漢字や、日本語の論理的な文法構造を学ぶことは、生徒にとってためになります」
日本語の授業は7年生(12歳)から13年生(18歳)まで続き、授業は週3回あります。9月の7年生新学年時点で日本語か中国語のクラスに学校側で生徒を振り分け、その年のクリスマスまでには、ひらがなとカタカナをマスターします。また毎年、和歌山県のふたつの高校と交換留学も行っています。ダートフォード・グラマースクールの生徒たちは和歌山で10日間ほどホームステイをします。日英両校とも、生徒たちは互いに相手校で授業を受けたり、部活動に参加したり、近郊に旅行したりとプログラムを楽しんでいます。
「さくらネットワークに加盟したことで、さまざまな可能性が開けました。他の教育機関と幅広く交流できるようになり、学者や研究者ともつながることができました」とシンプソン先生は語ります。ジュリアン・メトカーフ校長はこう述べます。「西洋と東洋の言語を並行して学ぶというのはとてもユニークな経験です。より広い視野をもって、自校の生徒たちだけでなく地元の小学校や中学校に対しても、日本や日本語について紹介する活動をこれからも提供していきたいです」
さくらネットワークには取り組むべき課題がいくつかあります。そのうちのひとつは、アフリカの加盟機関を増やすこと。JFは、ケニアをはじめアフリカ各地で日本語教育に携わる先生方と連携・協力し、日本語教育のネットワーク作りを支援しています。2019年には「第1回アフリカ日本語教育会議」がエチオピアで開催され、アフリカ全土13か国から70名が参加しました。また、中米カリブ地域の広域ネットワーク構築も進行中です。JFメキシコ日本文化センターが中心となり、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ、ドミニカ共和国など各国の日本語教師が集まるセミナーやシンポジウム、オンライン会議が継続して行われています。
世界中にさくらの花を咲かせるべく、種まきの努力は続きます。