最新記事

朝ドラ

史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ドラ「ちむどんどん」、沖縄県民が挙げた問題点とは

2022年8月8日(月)12時00分
東野りか(フリーランスライター・エディター) *PRESIDENT Onlineからの転載

沖縄の人間を典型的な"型"に嵌めた不快さ

2018年に引退した歌手の安室奈美恵は沖縄が生んだ稀代の歌姫である。沖縄出身のスターやアスリートはたくさんいるが、もっとも輝かしい功績を残したのは彼女だろう。日本でありながら、日本でない沖縄の国内での立ち位置というのは、戦前、戦中、そして現在でも非常にセンシティブだ。そんな沖縄の地位の向上に寄与した安室の評価は、沖縄ではとてつもなく高い。

母子家庭出身で、自身も離婚してひとり親となったA子さんはドラマ愛があるゆえの苦言を呈する。

「安室さんも母子家庭で育ち、とても貧しい生活を送っていたのに、あそこまで成功できて本当に尊敬しています。現在の沖縄でも実際に貧困とか、シングルマザーの家庭が多いとか、男が働かないとか解決されていない問題が山のようにありますが、今回の朝ドラではそこを面白おかしく切り取っているような印象で......。沖縄の人間を型にハメたらハメっぱなし。その先の展開がないのが残念だし、今のところ希望が見えないんです」

まるで「朝ドラ史上最低のつまらなさ」と言わんばかりだが、いったい何が原因なのか。筆者が沖縄県民とともに選考した"戦犯"キャラを紹介しよう。

働かない男"にいにい"の荒唐無稽ぶりは、病気レベル

ウチナンチュの男の典型(と思われる)なのが、主人公・暢子の兄(長男)の賢秀(竜星涼)、通称"にいにい"なのだが、これがありえないほどのごくつぶし。妹3人が母を手伝っているのに、何もせずに日がな一日ゴロゴロしているだけ。何もしないだけならまだしも、とんでもないことをしでかす男だ。

例えば、本土復帰前にドル紙幣を円に交換する際「高いレートで儲けさせてやる」という詐欺にまんまとだまされ、家中のお金を渡してしまったり、同じ詐欺師から紅茶豆腐(70年代にはやった紅茶キノコのパロディー)を大量に押し付けられたり、きれいなセールスパーソンから下心ありありで商品を買うが、彼女には婚約者がいて美人局に遭っている状態になったり......にいにいのおバカエピソードは枚挙にいとまがない。

こうしたおバカキャラはしばしば朝ドラに登場し、それに視聴者も引き寄せられるのだが、今回は"沖縄あるある"を並べられて県民が小バカされているように感じてしまったのかもしれない。

聖母のようにほほ笑みを絶やさない優子

テレビ情報誌の編集者として働く沖縄出身50代女性のB子さんが解説する。

「でも、にいにいをそんなふうに育ててしまった母親の優子(仲間由紀恵)にも責任があります。優子は非常に愛情深い優しい女性なのですが、とにかく男の子に甘い。にいにいがドル紙幣の交換詐欺に遭った時も、自ら親戚に借金をしてお金をかき集めている。本当ならば『そんなウマい話はあり得ない!』と叱り飛ばして息子をいさめるのが母の役目でしょう。しかしこの母にしてこの子あり。貧しさは環境や時代のせいだけではなく、親の無知と浅はかさが招いているのかも、という見方もできます」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、プラ・繊維系石化製品の過剰生産能力解消へ会合

ワールド

インド、金融セクター改革を強化 170億ドルの資金

ワールド

全米で約7000便が遅延、管制官の欠勤急増 政府閉

ビジネス

鴻海精密工業、AIコンピューティング関連装置調達で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中