世界的な登山写真家が捉えた、ほぼ誰もたどり着けない10の「絶景」

Jimmy Chin's Photos From the Edge

2022年1月28日(金)18時07分
キャスリーン・レリハン
ブリティッシュコロンビア州(カナダ)

ブリティッシュコロンビア州(カナダ) JIMMY CHIN

<世界屈指の登山家で写真家・映画監督でもあるジミー・チンが、世界7大陸での命懸けの冒険をまとめた作品集『ゼア・アンド・バック』から10の絶景を紹介>

ジミー・チン(下写真)は、超高難度の山岳スポーツの写真家にしてアカデミー賞も受賞した映画監督、そして世界屈指の登山家でもある。エベレストのスキー滑降からヒマラヤ・メルー峰の岩壁「シャークスフィン」の征服まで、前人未到の偉業に挑む本物のスーパーヒーローだ。

220201P54_MAP_02.jpg

JIMMY CHIN

しかし、意外にも世界で最も高い花崗岩の壁の1つを登ることが人生最大のリスクだったとは思っていない。それより大きかったのは、20代前半で下した人生の選択だった。

「自分の夢に懸け、ヨセミテ(国立公園)に移り住み、車の中で生活した」と、チンは登山の夢を追う決意をした当時を本誌に語る。

「クライミングは私がずっとやりたかったことで、決断に迷いはなかったと思われるかもしれない。でも、その後は何年間も疑心暗鬼だった」

それでも夢を追い掛けてヨセミテに向かい、青いスバルの後部座席で6年間暮らした決断は、間違いなく報われた。チンは今、世界最高のクライマーの1人。さらに人類史上最も偉大な身体的勝利のいくつかを映像や写真に収めることにも成功した。

チンの人生は、大きな賭けと人間の持つ可能性の到達点であり、その偉業は彼だけものではない。

2019年にアカデミー賞を受賞した『フリーソロ』は、世界で最も有名な岩壁「エルキャピタン」の端にカメラを持ってぶら下がったチンが、ロープや安全装置を一切使わずに登るアレックス・オノルドの姿を撮影したドキュメンタリー。映画制作のパートナーであり妻でもあるエリザベス・チャイ・バサルヘリィとの2作目の共同監督作品だった(1作目は2人を恋仲にした15年の『MERU/メルー』)。

2人の最新作は、18年に洞窟内に閉じ込められたタイの少年サッカーチーム救出についてのドキュメンタリー『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』(日本公開2月11日)。既にアカデミー賞の有力候補と噂されている。

チンはほとんど誰も追っていけない場所に出掛けるが、20年以上にわたる世界7大陸での命懸けの冒険をまとめた新刊の作品集『ゼア・アンド・バック──崖っぷちからの写真』では、その世界を特等席でのぞき見ることができる。南極大陸の氷の頂から、サハラ砂漠南部の世界一高い砂岩の塔まで、圧倒的な写真の数々を眺めるだけで心臓の鼓動が少し速くなるはずだ。

220201P54_MAP_03_330h.jpg
ゼア・アンド・バック──崖っぷちからの写真
表紙写真に写っているのは、チョモランマの登山ガイドのカミ・シェルパとミンマ・シェルパ
Reprinted with permission from THERE AND BACK.
Copyright © 2021 Jimmy Chin, Published by Ten Speed Press.

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド

ビジネス

スターバックス中国事業に最大100億ドルの買収提案

ワールド

マスク氏のチャットボット、反ユダヤ主義的との苦情受

ワールド

ロイターネクスト:シンガポール、中国・米国・欧州と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中