最新記事

インタビュー

「利他学」を立ち上げ、いまの社会や科学技術のあり方を考え直す──伊藤亜紗

2021年12月27日(月)11時00分
今泉愛子 ※Pen Onlineより転載

『きみの体は何者か─なぜ思い通りにならないのか?』(筑摩書房)

pen211224_book3.jpg

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

身体は、自分の思い通りにはならない。顔や体型だけでなく、動作もコントロールできないことが多いのだ。本書では吃音当事者である伊藤が、10代の読者に向けて自身の体験をもとに身体はなぜエラーを起こすのか、それとどう付き合えばいいのかを考えた。自分を知り、自分なりに工夫をして、身体と仲良くなっていく過程をていねいに語りかける。

『手の倫理』(講談社)

pen211224_book1.jpg

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

人間関係の中で、「さわる」ことや「ふれる」ことはどんな意味をもつのか。ケアやスポーツ、教育、性愛などさまざまな局面で、触覚はどんな働きをするのか。手は、相手の信頼を伝えたり感じたりする一方で、拒絶や暴力につながることもある。伊藤は、触覚が独特のコミュニケーションを成り立たせることを指摘し、手の働きについて思考を深めていく。

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)

pen211224_book2.jpg

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

人は情報の多くを視覚から得ている。では視覚障がい者はどうやって必要な情報を得て、外の世界と関わっているのか。伊藤は視覚障がい者や関係者にインタビューし、目の見える人と見えない人の情報の受け止め方や身体の使い方の違いを考察。目の見えない人は歩く時、足を「サーチライト」としても使っていることなどを示す本書はベストセラーに。

『「利他」とは何か』(中島岳志、若松英輔、國分功一郎、磯﨑憲一郎 著 伊藤亜紗 編 集英社)

pen211224_book4.jpg

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

伊藤がセンター長を務める、東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター。そこに所属する政治学者や哲学者ら5人が、利他について、それぞれの考えをまとめた論考集。伊藤は本書で、利他をさまざまな料理を受け入れるうつわにたとえ、相手のためになにかしている時であっても、常に相手が入り込める余白を湛えることを提案する。

※当記事は「Pen Online」からの転載記事です。
Penonline_logo200.jpg



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中