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「明治維新は薩長によるテロ」 『青天を衝け』で維新賛美の歴史観から脱却したNHK

2021年10月16日(土)12時40分
香原斗志(歴史評論家、音楽評論家) *PRESIDENT Onlineからの転載

第25話「篤太夫、帰国する」(8月22日放送)では、その内戦の生々しさが描かれた。渋沢成一郎らは佐幕派の部隊である彰義隊を結成し、新政府軍に徹底抗戦した。

そして、内部対立ののちに成一郎らの振武隊に参加した栄一の養子の平九郎が、新政府軍に執拗に追われた挙句、銃で蜂の巣のように撃たれながら自決した壮絶な姿を映し出した。

この悲痛な場面の直前、平九郎らは上野の山が燃えるのを遠望する。

史実を述べれば、すでに江戸城が無血開城したのち、上野の山に立てこもった彰義隊の本隊も、大村益次郎率いる新政府軍の一斉攻撃を受け、二百数十人がほぼ全滅した。

明治維新の本質を描いた大河ドラマ

むろん、明治という時代そのものを否定する必要はない。

しかし、薩長や一部の公卿が新政権において自らが主導権を握るために、謀略を重ね、テロを起こし、日本人同士が殺し合う状況をわざわざ引き起こしたのは、紛れもない事実である。

第27話「篤太夫と八百万の神」(9月26日放送)でも、渋沢は大隈重信に向かって

「天子様のもと、世界の知識を第一に用いた徳川と諸侯が一体となって政(まつりごと)をすべきだったんだ。上様にはそのお覚悟があられた。だから、政を返したんだ。にもかかわらず、薩摩や長州が徳川憎しと戦を」と怒鳴っている。

明治維新の本質を端的に表していると言えよう。

NHKという公共放送のドラマを通して、学校で習う歴史でも、政府の見解としても避けてきた、明治維新の負の側面を学べる――。NHKが(日本が)少しは開けてきたということか。いずれにせよ、歓迎すべきことではないだろうか。

香原斗志(かはら・とし)

歴史評論家、音楽評論家
神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。小学校高学年から歴史に魅せられ、中学時代は中世から近世までの日本の城郭に傾倒。その後も日本各地を、歴史の痕跡を確認しながら歩いている。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。著書に『イタリアを旅する会話』(三修社)、『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)、 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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