「レオ様」激似の顔を持つ男...その数奇な運命と、たどり着いた境地
I’m a DiCaprio Lookalike
BEN CORNISH
<行く先々でうり二つと言われてウンザリもしたが、ファンが喜ぶ顔を見て今の仕事を続けることに>
「似ている、そっくりだ」と言われだしたのは『ギルバート・グレイプ』が全米公開された1993年頃からだ。自分でも映画を見に行って、「確かに」と思った。
以来、レオナルド・ディカプリオがスターダムを駆け上がるにつれ、会う人たちに言われるようになった。「うり二つだ、他人とは思えない」
ディカプリオ主演の『タイタニック』が大ヒットすると、事態はさらにエスカレートした。当時私は20代初め。サンフランシスコに住んでいたが、街を歩いていると観光客がぞろぞろついて来たり、仲間と行ったバーで知らない人たちにじろじろ見られたりした。
俳優を目指して2003年にロサンゼルスに拠点を移し、オーディションを受け始めた。映画やTVドラマのチョイ役にありつけたが、どこに行っても「レオ様似」と言われる。自分としては当惑するばかりだった。ディカプリオに似た容姿ではなく、自分という人間を見てほしかった。
転機は映画『最終絶叫計画5』
12年のこと。勧められるままにパロディー満載の映画『最終絶叫計画5』のオーディションを受け、その一場面でディカプリオを演じることになった。それまでディカプリオの物まねをする気はさらさらなかったが、彼になり切るために特訓を受けることに......。
服装や髪形、メークも似せて、彼のボイストレーナーの指導まで受けた。この仕事は最高に楽しかった。
これがきっかけで、ディカプリオのそっくりさんとしてイベントなどに出てほしいという依頼が次々に舞い込むようになった。やってみると、この手の仕事はなかなかやりがいがあり、面白かった。しかも、次にどんな依頼が舞い込んでくるか予想もつかない。
17年には現代アートフェア「フリーズ・ニューヨーク」でのパフォーマンス作品に出演した。映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の一場面を再現する試みだ。
私はディカプリオが演じたやり手証券ブローカーのジョーダン・ベルフォートに扮して会場で待機している。
そして、いきなりマイクを手にし、映画の中でベルフォートが自社のトレーダーたちを奮起させるためにぶった演説を始める。通り掛かった来場者たちは最初何が始まったか分からずポカンとしているが、やがて映画のあのシーンだと気付いて演説に聞き入る。
そのうちに大勢の人だかりができて、見物人がみんな映画の中のトレーダーになり切り、演説が終わると、ベルフォートの熱弁に心動かされたとばかり拍手喝采してくれる。
来場者を巻き込んで映画の名場面を即興で再現するというシュールな試みで、実に面白かった。