カン・ハンナ「私のおすすめ韓国映画5本」とマブリー愛、韓国映画が面白い理由
2000年代になり、韓国映画は変わった。『殺人の追憶』は560万人以上の観客を動員し話題になったが、そうした韓国ブロックバスターの「仕組み」が作られた。
ポイントは、社会性があること。1000万人以上を動員する映画を分析したリポートが韓国で出ていて、その中でも「リアリティー」や「社会性」が特徴として挙げられている。社会性があるとメディアが取り上げやすいし、観客の共感も得やすい。
ポン・ジュノ作品もそうだ。彼は『パラサイト』も素晴らしいが、『殺人の追憶』がその原点になったのではないか。
音楽の場合、韓国ではグローバル戦略として欧米に合わせて作るが、ポン・ジュノ監督は韓国のオリジナリティーを重視する。彼はこう言っている。「最も韓国らしいものが、最も世界的な作品になる」
チャン・フン監督の『タクシー運転手 約束は海を越えて』も、実話を基にした社会性のある映画だった。人口5200万人の国で、観客動員数は1200万人。
こんなに大ヒットしたのはなぜか。2017年になって、1980年の民主化運動、光州事件をテーマにした映画が公開されたのはなぜか。
理由は、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾にある。2016年末に弾劾訴追され、2017年3月に逮捕された。この弾劾と公開時期が一致している。
1980年――。光州は封鎖され、ソウルから行けない。そこで取材に行きたいドイツ人記者がソウルのタクシー運転手に、10万ウォンの大金を渡すから、光州まで行ってくれと頼む。お金を稼ぎたいだけだった運転手はその中で、軍事独裁政権がデモを弾圧し、民衆を殺すのを目撃する。
社会を変えるのは私たち民衆だと描き、正義のメッセージを強く打ち出した映画だった。
私はいま韓国映画をテーマに博士論文を書いている。そこでも現代の韓国映画の特徴として示しているのが、人々の記憶を再生産する役割。
『タクシー運転手』は今の時代に向けて、民主化運動の物語を残し、みんなの記憶を引き出す役を担った。そんなところも日本の人たちに理解してもらえたらと思う。
リアリティーを追求し、完全なフィクションよりは、ファクトとフィクションを混ぜた作品が最近は主流になっている。2017年公開の『犯罪都市』も、実話を基にしてヒットした映画だった。
ただしこの作品、『殺人の追憶』と違い、基になった事件はあまり知られていない。2004年と2007年の2回、ソウルのチャイナタウン――複雑な歴史の中で朝鮮族の人たちが集住するようになった地区――で起こった犯罪組織と警察の抗争を、1つにまとめて映画化したもの。
私はこれを観て、あまりの残酷さに「大丈夫か韓国?」「これは夢に出るでしょ!」と衝撃を受けた。公開当時、中国人や朝鮮族への差別につながるのではないかという意見も出たほどだ。