最新記事

カルチャー

考えることがストレスになる人とワクワクできる人の決定的な違い

2021年4月4日(日)15時40分
齋藤 孝(明治大学文学部教授) *PRESIDENT Onlneからの転載
明治大学教授の齋藤孝さん

明治大学教授の齋藤孝さん(撮影=塚原孝顕)


充実した人生を過ごすためには、どうすればいいのか。明治大学の齋藤孝教授は「仕事、家族、人間関係など、人生で直面する困難やハードルを乗り越えるには、『考える』ことが求められる。だからよい思考習慣を身につけることが重要だ」という――。

※本稿は、齋藤孝・中野信子・山口真由『人生の武器になる 「超」勉強力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「思考中毒」になろう

わたしはよく学生たちに、「君たちは将来、考えることがストレスになる人と、ワクワクして考える人にわかれるんだよ」と伝えています。

仕事、家族、人間関係など、人がおよそ人生で直面する困難やハードルを乗り越えるには、まず「考える」ことが求められます。考えるのが習慣になっていない人は、なにか起こるたびにストレスが溜まり、やがて心身が疲れ果ててしまうでしょう。

かたや、様々な種類の本を読んで、幅広く勉強をしてきた人は、思考習慣が身についています。どんなものごとに対してもワクワクしながら考え、挑戦できるのです。

人の脳内で働く神経伝達物質のひとつに、βエンドルフィンがあります。友人と会話したり、美味しいものを食べたりして、快感を得たときに分泌されます。そして、もっともβエンドルフィンが分泌されるのが、困難を乗り越えてなにかを達成したときです。

考えることが習慣になると、つねにチャレンジして困難を乗り越えることができ、どんどん気持ちよくなっていきます。

エンドルフィンとは、「体内性モルヒネ」を意味する略称です。まさに、勉強をして「思考中毒」になると、一生ワクワクしながら生きることができるのです。

考えたことを記録し、見返す

運動習慣を身につけるのにも、ダイエットを続けるのにも、まず大切なのは現状の把握です。自分の状態を客観的に把握するからこそ、適切に課題に対処できるからです。

そして、これは思考においても同じです。現状把握をしないまま、ただ「考えよう」と頑張っても、いつも同じものごとで繰り返し悩んだり、あいまいな思考を続けたりしがちになります。

よい思考習慣を身につけるには、思考している内容と時間を書き出すことが有効です。

多くの人は、スケジュール帳に「Aの件で打ち合わせ」「B社で商談」などと予定だけを書きますが、そのときに、予定の隣に「打ち合わせで決断するには?」「商談を成功させるには?」と、自分の思考の内容を記録するのです。

そうすれば、スケジュール帳を開くだけで、思考の課題を目にすることになり、隙間時間などを活用しながら、つねに考えるきっかけをつくれます。

また、思考した時間を記すと「なにをどこまで考えていたか」という軌跡もわかるので、すぐに思考を再開でき、ぐるぐる悩まずに考えが明晰になっていきます。

こうして自分が考えたものごとを記録し、見返していれば、自然と思考習慣を身につけることができます。

いったん思考習慣ができれば、仕事でも勉強でも、創造的なアイデアや解決策をどんどん出せるようになるでしょう。考えるのが苦にならないので、ストレスを溜めることもありません。ぜひ試してほしいテクニックです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロシアとの軍事関係「絶えず前進」

ワールド

米政府閉鎖で富豪が1.3億ドル寄付 軍給与不足に備

ワールド

EU、対ロシア制裁第19弾を採択 銀行や中国製油所

ワールド

国家情報局創設へ検討進める、インテリジェンス強化で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 4
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中