最新記事

韓国

韓国ドラマ、まさかの2話で打ち切り 中韓対立の炎上はキムチからエンタメへ

2021年4月2日(金)22時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

わずか2話を放送しただけで打ち切りとなった韓国ドラマ『朝鮮駆魔師』 YTN News / YouTube

<反中意識が高まる韓国で、時代劇に中国テイストが混じったことで大炎上に──>

中韓のネットユーザーたちの間で昨年末から勃発したキムチ論争の余波が続いている。

フォロワー数1400万人を超える中国の人気ユーチューバー李子柒氏が、自身のチャンネルで「中国の伝統料理」というハッシュタグとともにキムチを紹介したことをきっかけに、韓国ユーチューバーHamzy氏も負けじとキムチ作りの動画を投稿して反撃した。

ところがこの件でHamzy氏は、中国での活動をマネジメントしていた中国の芸能事務所から契約を打ち切られてしまうなど、中韓の対立が勃発した。

実はこのような対立が、今韓国のエンタメ業界にも飛び火して炎上としている。

韓国の地上波放送局SBSが春の話題作として放送開始した時代劇『朝鮮駆魔師』は、わずか2話を放送しただけで中韓対立の煽りを受けて打ち切りとなってしまった。

オンエア前からトラブル続き

去年の11月には、出演者ひとりのコロナ陽性が発覚し撮影が中断。その1カ月後には、主演俳優が撮影中に落馬し骨折するなど、放送開始前から不運に見舞われた作品ではあったが、オンエア開始後も、朝鮮王朝の第3代国王太宗を殺人鬼のように描いて歴史歪曲が指摘されるなど悪評が立った。

さらに、ドラマに登場する一部のセットや料理、伝統衣装までも中国風に表現されていた点が問題視され、放送打ち切りの大きな理由となった。朝鮮時代の韓国を舞台に繰り広げられる物語だったが、あるエピソードでは外国人神父に振る舞われるご馳走に、中国の代表的なお菓子である月餅や中国式肉まん、ピータンなどがテーブルいっぱいに並んだ。また、妓生と呼ばれる当時の芸者たちが暮らす建物も、なぜか中国風のセットに作られており、役者が韓国語でセリフをしゃべっていないシーンでは、まるで中国ドラマかと疑ってしまう場面もあった。

SF作品などでは、様々な国の文化からインスピレーションを受け、新たなスタイルを創造することはよくあるものの、それを時代劇でそれをやってしまったことは驚きである。

視聴者からの苦情、さらにスポンサーの撤退

放送直後、作品に違和感を覚えた視聴者からの苦情の電話が相次いだ。さらに、韓国大統領府のウェブサイトの国民請願掲示場には「放送を中止して欲しい」という投稿も寄せられ、視聴者を中心に多くのオンライン署名が集まったという。

世論の声が強まるにつれ、番組スポンサー各社も次々と広告契約中断を発表した。この事態にSBSは、先月26日「すでに制作会社には製作費を支払っている状態である」「80%は撮影終了していた」ことを明らかにし、謝罪と共に「地上波放送としての重い責任感をもって放送を打ち切りにする」と発表した。

また、31日には韓国放送通信審議委員会がオンラインにて行った記者懇談会では『朝鮮駆魔師』についての苦情は5149件も寄せられた」とし、「放送打ち切りとは関係なく、調査を進める」という強い姿勢を表明して注目を集めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中