最新記事

キャリア

ブッダの言葉に学ぶ「攻撃的にディスってくる相手」を一瞬で味方にする「ある質問」

2021年3月30日(火)19時10分
光澤 裕顕(浄土真宗(真宗大谷派)僧侶) *PRESIDENT Onlineからの転載
ディスる男

写真はイメージです。 imtmphoto - iStockphoto


僧侶でマンガ家としても活躍する光澤裕顕さんは、ブッダは「悪い人」の特徴を熟知していたと指摘します。なかでも、とても横柄でえらそうな態度を取る人物を感服させ、弟子入りの申し込みまでさせた質問とは――。

※本稿は、光澤裕顕『生きるのがつらいときに読む ブッダの言葉』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

何千年もの歳月を経て残った言葉

人間関係に関する悩みは根深いものがあります。それを裏付けるように、ブッダの言葉にも他者との交わりに関する言葉がいくつも残っています。

今日残っているブッダの言葉はブッダ自身が書き残したものではありません。ブッダの死後、弟子たちが集まって文字に起こしたものです。

これが「お経」です。

漢文に訳されたお経には「如是我聞(にょぜがもん)」という定型句で始まるものがありますが、これは「私は(ブッダから)こう聞いた」という意味です。弟子たちが、師との大切な思い出を丁寧に記録している姿が想像できますね。

もちろん、当時はボイスレコーダーなんてありませんから、頼れるのは弟子一人ひとりの記憶だけ。そのため、記録する作業も細心の注意を払って行われたのではないでしょうか。

残念ながら、長い時間の経過の中で消失してしまった言葉や、胸の奥にそっとしまわれたエピソードもあったはずです。

ですから、何千年もの歳月を経て今日まで残った言葉は、弟子たちにとって、とくに印象深かったものや共有すべきだったもの、また、多くの人が求めた事柄だったのでしょう。

説法は一対一で

ちなみにブッダは、説法をするときに「対機説法(たいきせっぽう)」というスタイルをとっていました。これは一対一で対面し、相手の能力や素質、理解度に合わせて話の仕方を変える手法のことです。

難しい内容であれば、やさしい言葉を使ったり、動物のたとえ話にしたりと、さまざまな工夫をしながら教えを説いたのでした。

表現を変えながら、相手に正しくメッセージを伝えようとする、ブッダの柔軟性とやさしい人柄が感じられます。

人間関係のイザコザは2500年前も

ブッダとその弟子たちは、「僧伽(さんが)」という集団を形成して修行に励んでいました。

しかし、農業や牧畜など集団内での生産活動は行っていなかったので、生きていくのに必要な最低限の物資は布施などによって支えられていました。王様や富豪たちから土地の寄進を受けたこともあります。施ほどこしを受ける中で、悩みごとの相談も受けていたのでしょう。

ブッダや弟子たちのまわりには、僧俗を問わず、さまざまな人たちが集まっていました。そうした中で、人間関係のトラブルもしばしば発生していたようです。

有名な逸話としては、美男子ゆえにそのモテっぷりが修行の妨げになったアーナンダや、教団の乗っ取りを画策したダイバダッタの話が挙げられます。

「仏説観無量寿経(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)」というお経には、マガタ国(紀元前413〜395年)という国で起こった、親子間の争いの話が語られています。

シチュエーションが違うだけで、問題の本質は現代と何も変わっていません。

ブッダに直接教えを聞くことができた時代でもこんなトラブルが起こっていたくらいですから、たとえ仏の声でも、嫉妬や欲望に駆られた人間の耳には入らなかったということでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促

ビジネス

米アポロ、後継者巡り火花 トランプ人事でCEOも離

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中