日本語は本当に特殊な言語か?
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<「日本語は特殊な言語である」という言説は果たして正しいのか。言語学的に言えば、ありふれた言語の1つに過ぎない。だが日本語には「音声だけでは十分に機能しない」という特徴がある>
「日本特殊論」は古くから存在する。それは「日本すごい!」という優越感としての特殊論もあれば、「日本はダメだ」という劣等感からの特殊論もある。その中でもメジャーなものの1つが、日本語の特殊論であろう。
「日本語は特殊な言語である」という言説を、わたしたち日本語話者は、誰もが聞いたことがあるはず。しかし、何が特殊なのか?
言語学的に世界を見渡せば、日本語はありふれた言語の1つだといえる。母音や子音の数が平均的であるだけでなく、名詞の単複を区別せず、述語が最後に来る語順(S O V)という特性を持つ言語は、世界言語の中では多数派に属するからだ。
「日本語は特殊な言語である」という言説は、欧米語、特に英語と比較することによるものである。
それでも、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットの4種類の文字を使い分けるのは、やはり特殊であるという指摘もあろう。しかし、もし日本語が他の言語と違う点があるとすれば、文字だけでなく、音声についても指摘しないわけにはいかない。いや、そこにこそ日本語の特殊性がある。
そもそも言葉とは、考えを音声によって伝えることから生まれた。言葉の基本は音声なのである。国立国語研究所のレポート(2010年)によると、現在、世界には6500ほどの言語があるが、そのうち、きちんとした文字体系のある言語は400くらいだという。
日本語も、千数百年前に中国から漢字(漢語)が入ってくるまでは文字はなかった。音声のみだったのである。
日本語には、同音異義語が異常なまでに多い
ところが、いまわたしたちの使っている日本語は、音声だけでは十分に機能しない。文字を見なければ正確にはわからないことが少なくないのである。これは同音異義語が異常なまでに多いことからきている。
明治以降、それまでなかった西洋の概念や事物を翻訳するために大量の和製漢語が造られた。そのとき、漢字の持つ意味だけに目を向けて音を度外視したために、同音異義語が溢れる結果になった。
これは日本語の音の少なさに原因がある。諸説あるが、音の最小単位である音節が英語は3000以上(数万という説も)あるのに対して、日本語は100くらいだという。いかに少ないかおわかりだろう。