「韓国っぽ」なお菓子からおばあちゃんの手書き文字まで 無料ハングルフォント続々と
読み書きできるようになったおばあちゃんのフォント
このように、フォントブームは続いているのだが、その中でも最近注目を集めているのが「おばあちゃん」フォントである。
慶尚北道の漆谷郡では、幼少時代に日本語を習い、その後日本の統治が終った後も学校に行くことが出来ずに、読み書きを習えなかった老人対象の教室が開かれてる。とくに、当時女子は教養を必要とされなかったという社会背景もあり、生徒はおばあさんら女性ばかりだ。
はじめは自分の名前さえも書くことが大変だったそうだが、だんだんと読み書きの楽しみを知り、おばあさんたちは自分の文字で詩を書き始める。それらをまとめ2015年から詩集を出版し、さらにその収益を貧困によって学習が難しい子供たちへの基金に寄付しているという。2019年には、そんなお婆さんたちを追ったドキュメンタリー映画『Granny Poetry Club(칠곡 가시나들)』が上映されて韓国内でも注目を浴びるようになった。
そして漆谷郡は、昨年6月から「おばあちゃんのフォント」の開発を始めた。生徒である74歳から86歳のお婆さんたち5名は、4カ月の練習をして臨んだそうだ。ハングル文字はもちろん、数字やアルファベットもコンピューターで読み取りデザインされている。漆谷郡は、無料配布だけでなく自治体のパンフレットやイベントの横断幕、チームTシャツなどのロゴにも活用していくと発表している。
この味のある「おばあちゃんフォント」に真っ先に反応を見せたのが、Z世代と呼ばれる若者たちである。オンラインでの反応を見てみると、「字を見ていると、おばあちゃんに会いに行きたくなった」「文字の大事さを改めて感じた」という声が集まっている。
現在、スマートフォンとパソコンで使用可能にできるように開発を進めており、近日中にも一般ダウンロードができるようにする予定だという。
「文字を書く」ことよりも、キーボードやスマートフォンの画面で「文字を打つ」ことの方が多くなった。とくに社会人になってからはすっかり「手書き」で文字を書く機会が減ってしまったように感じる。しかし、この風潮が逆に手書きの暖かさを見直すきっかけとなっているのかもしれない。
映画界はスマホ時代に手書きのタイトルロゴを再評価
そう考えてみれば、韓国の映画のポスターのタイトルロゴは、日本映画に比べ手書きで書かれているが多い。アクション映画の荒々しい字体はもちろん、韓国では「ポエトリー アグネスの詩」や「牛の鈴音」など情緒あふれる映画のタイトルロゴも有名である。昔から多い方ではあったが、特に2000年代後半ごろからポスターデザイン業界でブームとなり急増した。iPhoneが登場しスマートフォンを手にしだしたころから、人びとは「書く文字」を求め始めたのかもしれない。
日本で韓流ブームから始まり、韓国ブームが定着してもう10年以上がたつ。韓国語を第二外国語として教える学校も増え、若者の間ではハングルを理解できる人も多いのではないだろうか? プリクラやインスタグラムのストーリーズなどでは、日本人の写真にハングル文字がデコられた写真を見かける機会も増えた。
実際に美しくハングルを書いてみたいと思う人も増えたのであろう。昨年10月には「日本ハングル書芸・カリグラフィー協会」も発足されている。それだけ手書きに注目が集まっている証拠だろう。
今、様ざまな無料ハングル・フォントが配布されている。韓国語に興味がある方は、ぜひ色々ダウンロードし使って見てほしい。その文字の裏にあるストーリーに触れてみるのも、また語学の楽しみにつながるのではないだろうか。