寄生する家族と寄生される家族の物語 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』
Bong Joon-ho at His Best
ある日、キム家の長男ギウ( チェ・ウシク) は、友人から裕福なパク家の英語の家庭教師をやらないかと誘われる。パク家の豪邸を訪問したとき、ギウは家族の人生を変えるチャンスを見つける。そしてキム家は全員でパク家に食い込み、彼らにとって欠かせない存在になるための計画を立てる。
やがてキム家の全員が映画の題名どおり、パク家に「寄生」して生活し始める。だが不運な上流階級のパク家は、キム家が自分たちの金に依存しているのと同じくらいキム家の労働に依存する。こうなると、どちらがどちらに寄生しているのか分からない。キム家がパク家の豪邸と財産を横取りしようとする最初の1時間は、犯罪コメディーの前向きなエネルギーに満ちている。中盤でパク家がキャンプ旅行に出掛けている間に、キム家はパク家の居間に集まって勝手に酒を飲み、冷蔵庫の中身を食い散らかす。だが、その後の思わぬ展開で2つの家族は異なる立場に置かれ、キム家は現実的で倫理的な全く新しい問題に直面する。
映画の後半は、壮大に描かれる自然災害によって、キム家の住まいがある荒廃した路地が深く黒い下水につかる場面から始まる。やがて、2つの家族が隠していた秘密に加えて、家族も知らなかった秘密がスリリングな演出とともに明らかになる。
運命は逆転したけれど
『パラサイト』を見る前に仕入れておく基礎知識は、これくらいにとどめたい。そのほうが、観客に伝えたいことだけを伝えたいときに詳細に明らかにするポンの手腕を、より深く味わうことができる。
この作品は、ある特徴を持つ集団を別の集団の安易な引き立て役にするような、階級に関する寓話ではない。裕福なパク家は世間知らずで搾取的だが、同時に欲望と機能不全を抱えたリアルな家族だ。
ポンは、裕福な家族に働いている家父長制の力学を特に鋭く分析している。母親は守られた存在であり、IT業界の大物である夫に経済的に依存しているために、キム家のような詐欺師の餌食になる。
この物語に込められた資本主義批判は広範で深い。映画が終わっても、問題はまるで解決されずに残る。
キム家は運命の逆転劇にたどり着くが、それで公正さがもたらされたという爽快感はまるでない。一方が勝って、一方が負けるゼロサム競争で、家族と個人を戦わせるシステムが暴露されるだけだ。