過熱する韓国キッズ・ユーチューバー ベンツ運転からタコのつかみ食いまで
さらに、お金以外にも肖像権の問題がある。ドイツでは2013年、産婦人科にカメラを設置し妊婦たちを追ったリアリティーショー形式のドキュメンタリーの撮影が行われた。しかし、ドイツでは法律上、赤ちゃんでさえ生まれた瞬間から個人の権利が認められるため、たとえ両親が撮影許可したとしても放送はできないということで、ベルリン州政府は児童の権利保護のためこの番組の制作を禁止し、番組はお蔵入りとなった。
ドイツ人と結婚し、現在ドイツ在住の筆者の友人も自分が生んだ赤ちゃんの写真をSNSに載せていない。日本では子供の権利は親が管理するという考え方をする人が多いが、ドイツでは生まれた時から個人の権利があるという考え方が根付いているようだ。
キッズユーチューバーの収入が激減する?
こうしたなかで、YouTubeは米連邦取引委員会から「児童オンラインプライバシー保護法」違反に関して調査を受けている。これに関連してYouTube側は、子供の安全に関するポリシー違反として今年に入って3カ月間だけで80万本以上のビデオを削除していることを明かした。またこの結果をもとに、今年6月3日「幼い未成年者(13歳以下)が大人の同伴なしでライブ配信を行うことはできない」という条項を含む、「未成年者や家族を保護するための取り組み」規制を発表。さらにブルームバーグの報道によれば、YouTube側は子供たちが見る可能性の高い動画に、その内容に合わせたターゲット広告を表示させないことも検討中だという。これが実現すると、子供YouTubeチャンネルの広告収入が激減するのではないかとも言われている。
一部の行き過ぎたユーザーのために規制をかけすぎることで、自由で活気があるプラットフォームとして成長したYouTubeの魅力がどんどん失われていくかもしれない。しかし、お金や注目欲しさに暴走しはじめたのなら、ある程度ブレーキとなる規則を作らなくてはいけないだろう。
動画が誰でもスマートフォン1つで簡単に撮影できてYouTubeやインスタグラム経由で世界に投稿できる現代は、「1人1メディア時代」ともいわれている。少年少女たちは、発信することによって何かをそこへ求めているようにも見える。SNSで人気者となったスターたちの素顔を追ったネットフリックスのリアリティー番組『密着!キャメロン・ダラス』の中で、15歳のマーク・トーマス君は「SNSスターになる子供たちは、家庭環境に問題がある子が多い」と語っている。マーク君本人も父親に3年間も会っていない。インタビュアーに対して「不幸に見えても、バネにして成功する人は多い」としっかりした口調で話している。また、日本の10歳の不登校児「ゆたぼん」は学校に行かないことは悪いことではないという持論をYouTube上で発信した。これはネット上で大炎上してしまったが、少なくともゆたぼんは生きづらさを抱えたまま学校に行かずに引きこもるのではなく、ネット上に自分の居場所を見つけたように思えた。
未成年だからといって、キッズユーチューバーの誰もが親に操られて出演しているという訳ではないだろう。家族の輪から外れ、自分らしく発言できる居場所がSNS上に見つかった子供たちもたくさんいる。しかし、彼らが安心して安全にネット上に情報発信できるようにするためには、YouTubeという道路を整備し、アメリカやドイツの法律のような暴走を規制するルールが必要になってくるだろう。