最新記事

パックンのお笑い国際情勢入門

「下ネタは世界共通。男たちは同じオチで、同じ顔で笑う」早坂隆×パックン

2019年8月9日(金)19時50分
ニューズウィーク日本版編集部

早坂 素晴らしい教育ですね。学校の授業よりよほど頭の訓練になるし。

僕はいろいろな国でジョークを聞いて、それを日本語に訳すのが仕事になっているんだけれど、翻訳にはすごく気を遣っている。僕のジョーク集以前にもジョーク集は出ていたが、あまり売れていないものが多い。例えば、学者さんが訳したジョーク集が何冊かあったが、僕も昔はその本を読んで、あまり面白いと思わなかった。でもさっき言ったみたいに、ルーマニアとか海外で現地のジョークを聞くと面白い。それはなぜかを考えると、やはり訳が硬いジョーク集が多かったのだと思う。

ジョークを活字にして読むときは、助詞1つ、改行するかしないか――改行が間(ま)になるんだけれど、それ1つで、笑えるか笑えないかが変わると思う。そういうところは気を遣って、日本人の読者が笑えるように書いている。

パックン なるほど。改行とか助詞とかは分かりますが、日本人が笑える単語とか、逆に分からない単語とか。あとは、お下劣すぎると笑えない単語とか。

早坂 そうですね。下ネタはそこが一番難しいですよ。下品になっちゃうと面白くなくなっちゃう。

パックン ペニスと一物、どっちがいいんですか、どっちが笑えない?

早坂 たぶん、ペニスだと校閲に修正を入れられちゃうんじゃない?

パックン あとは何がダメですか。性器は?

早坂 男性器とか女性器とかにしますね。文章の流れで「アレ」とかのほうがいい場合もある。やはり日本の出版業界には使っちゃいけない言葉があるので。

パックン そうなんだ。

早坂 あと、アメリカにもたくさんあると思うが、人食い人種が出てくるジョークが多い。人食いとかも、編集者によっては嫌がったりする。酋長という言葉を嫌がったり。「南の島の酋長」と書くんですけど、それは差別語だとなって、酋長を族長に変える、という校正が入る。まあ、テレビのほうがやれないことは多いと思うが。

「ギリギリのところで笑いをとる。不自由があるからこそ面白い」

パックン さっきの話で思い出したんだけれど、これはマックンから聞いた話。「女性のお尻はhip、女性の胸はbust、では英語であそこは何というか」

早坂 that!

パックン 正解はthereです。みんながvaginaとか思い浮かべるところで、「何言ってるの、あそこはthereだよ」と引っ掛けるやつなんだけど。

さっきの話に戻すと、人種や宗教など、いろいろな立場の人をオチに使うジョークがたくさんあるが、ジョークと差別の関係について。ジョークには危険性もある?

早坂 ありますね。ジョークにはいろいろな縛りがあり、言っちゃいけない、言ったら周りから怒られることもいっぱいある。そのギリギリのところで笑いをとるのがジョーク。不自由があるからこそ面白い。

パックン 線引きはどうする?

早坂 線引きは国によっても違う。例えば日本で、(2017年末に)ダウンタウンの浜田雅功さんが顔を黒塗りして批判された。海外から見たら不謹慎、ダメとなったことがあった。日本人からすると、あー、これもアウトなのかと驚きが大きかった。

日本側の言い分はどうであれ、世界では通らない。世界統一ルールみたいなものは今のところないし、国によって、時代によっても変わるので、難しいところ。でもギリギリを攻めないと面白くならない、というところもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

AIブーム、崩壊ならどの企業にも影響=米アルファベ

ワールド

ゼレンスキー氏、19日にトルコ訪問 和平交渉復活を

ワールド

中国の渡航自粛、観光庁長官「影響を注視」 10月は

ワールド

北朝鮮、米韓首脳会談の成果文書に反発 対抗措置示唆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中