佐久間宣行が「正しいことが的確に書かれている」と唸った1冊の本
理由について検証することで、失敗は失敗じゃなくなる
――同じ時代に私もテレビ制作の現場にいましたが、当時はハラスメントの嵐でしたよね。それでも続けてこられたのは、なぜだと思いますか?
『ずるい仕事術』という本の中では当時のことを結構マイルドに書いていますが、確かに、本当にあの頃はハラスメントが横行してました。だから結構早い段階で、「自分にはこの戦い方は向いていない。このままだと潰れるだけなので、潰れない戦い方を編み出そう。それでダメなら辞めよう」って思ったんです。
僕が大学時代に入っていた広告研究会って、学生サークルなのに会社組織みたいな感じだったんですよ。そういうものに向いていないと20歳の時に気付いて、挫折を味わった。だから言ってみれば、一度絶望している分、失敗に対する耐性があった。
会社の言いなりになっていたらメンタルを病むことや、自分が我慢できないものは何かについては学生時代から分かっていたので、それを徹底的に避ける方法は何だろうかと。
このあたりの戦い方については自分の本でも書きましたが、『20歳のときに知っておきたかったこと』にも近いことがいくつも書かれていたので、すごく共感したんです。
――『20歳のときに知っておきたかったこと』の中で、「これって自分の思いと同じじゃん!」と思った部分を教えてください。
まずは第1章の「スタンフォードの学生売ります」に書かれている
・もっと大切なのは、失敗も受け入れるべきだということでしょう。じつは失敗するからこそ学習することができ、それを人生に活かしていけるのです。進化が試行錯誤の実験の連続であるように、最初は失敗をするのがつねで、つまずくことも避けられません。
・成功の秘訣は、何か試すたびに、どれだけ教訓を引き出し、その教訓をもとに次の段階にすすめるかどうかなのです。
という部分です。
失敗って、その理由について検証していくことで、失敗じゃなくなるんですよ。人は失敗をするから、若いうちは失敗を織り込んだ上で行動して検証していけば、次に活かせるようになる。そうなると失敗は失敗ではなくなるので、ここにすごく共感しました。
ほかには、第6章の「行く手の乱気流」に、実際に仕事で失敗したゲーム会社の社員がゲームのキャラクターになりきって、クレームを寄せた1人1人にお詫びの手紙を書いたエピソードが印象深かったです。
彼はエンジニアは最初から完ぺきではないこと、でも決して諦めないと書き、失敗のもとになった図面と新しい図面の両方を添えたんです。
そうすることでクレームというマイナスの経験は、会社にとっても顧客にとってもプラスの学習機会になった、とあるんですが、失敗したから終わりじゃなくて、逆にブランディングに活かせたことが面白いなと思いました。
――実際に佐久間さん自身も「これは使える」と思ったエピソードはありますか?
第7章「絶対いやだ! 工学なんて女のするもんだ」の中に、
・情熱とスキルと市場が重なり合うところ――それが、あなたにとってのスウィート・スポットです。そんなスポットを見つけられたら、仕事がただの生活の糧を得る手段ではなく、仕事が終わった後に趣味を楽しむのでもなく、仕事によって生活が豊かになる、すばらしいポジションにつけることになります。
と書かれています。
仕事をしていく上で、情熱とスキルが市場と折り合う部分はすごく大事だと思います。伊集院光さんから聞いたんですが、伊集院さんがかつて師匠から「いくら時間をかけても何とも思わないようなこと、それに社会性を足せば、その先も生きていける」って言われたそうなんです。
スウィート・スポットってそれに近いんじゃないかな。「短い単語で言語化していて、すごい!」と思いましたね。
『新版 20歳のときに知っておきたかったこと
――スタンフォード大学集中講義』
ティナ・シーリグ 著
高遠裕子 訳
三ツ松 新 解説
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『佐久間宣行のずるい仕事術
――僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』
佐久間宣行 著
ダイヤモンド社
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