最新記事

株の基礎知識

初心者が知らない、勝ち続ける投資家が必ず守る「ルール」

2021年9月7日(火)13時50分
岡田禎子 ※かぶまどより転載

deepblue4you-iStock.

<たとえマーケットでは常識でも、自分のルールに反することは決してしない。個人投資家のマイルールには、成功へのヒントが詰まっている>

勝ち続ける投資家の密かな決め事

刻々と変わる株式相場では、周囲に流されず、粛々と取引を実行することが成功の鍵。そのことを身をもって体験している投資家ほど、独自の売買ルールを持っています。

たとえマーケットでは常識でも、自分のルールに反することは決してしない。個人投資家のマイルールには、成功へのヒントが詰まっています。

■「PER70倍以上の銘柄は買わない」

成長株投資で有名なAさんのマイルールは「PER70倍以上の銘柄は買わない」。成長株ではPER100倍以上もゴロゴロあるはずなのに、PER70倍以上は買わないとは一体どういうことなのでしょうか?

PERとは株価収益率のことで、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で買われているかを見る尺度です。PERが高いほど株価が割高、安いほど割安と判断されます。

●PER=株価÷EPS(1株あたり利益)

一般的に、PERは15〜20倍が適正といわれます。ただ、急成長している企業の場合は、投資家たちの期待がプレミアムとなって株価に上乗せされるため、なかには100倍以上の非常に高いPERがついてもなお買われる銘柄もたくさんあります。

しかしながら、異常に高いPERは、投資家の期待が高まり過ぎたことの裏返し。膨らみすぎた風船は、わずかな刺激で爆発する危険性があるのです。

それに対して、仮に成長株の利益が次期以降も3割で伸び続けるとした場合、足元のPERが70倍であれば、5年後のPERは19倍で適正範囲になります。つまり、5年後までの成長を織り込んで現在の株価を評価するなら、PER70倍であっても決して高すぎるということにはなりません。

だから、将来の利益水準から割り出すなら「PER70倍までが妥当な範囲内」。これが、Aさんのマイルールの根拠なのです。

●テスラ<TSLA>

2020年にはテスラ<TSLA>が大きなブームとなりました。言わずと知れたアメリカの電気自動車メーカーで、現在の世界を代表する成長銘柄です。コロナ禍で株価が急上昇するとともにPERもぐんぐん伸びていき、Aさんが検討を始めた時点のPERは800倍にまで達していました。

PERは、「投資資金を回収するまでにかかる期間」を示す数字でもあります。PER800倍ということは、投資資金を回収するには8世紀(800年)かかるということ。たしかにテスラの将来性は魅力的に映りましたが、結局、Aさんはマイルールに従って購入しませんでした。

加えて、異常なまでに高PERの銘柄は、その期待された成長が鈍化した場合には一気に大暴落するリスクがあります。さらに、金利が上昇すると真っ先に売られるなど、高PER株ならではのデメリットもつきまといます。事実、テスラの株価はその後ピーク時よりも3割以上も下落してしまいました。

kabumado20210906success-chart1.png

「その株を買うためならいくらでも払う」という状況はマーケットが過熱している証しであり、そこには危険が伴います。たとえ周りの全員が買っていたとしても、自分自身が納得できる妥当なリスクの範囲内でなければ手を出さない、という心がけは(とても難しいですが)非常に大切です。


市場を支配しているのは数字ではなく、人間の心理だ──ジョージ・ソロス

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国、来年も政府債発行を「高水準」に維持へ=関係筋

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省

ビジネス

三井住友トラスト、次期社長に大山氏 海外での資産運
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中