バブルを生きた元証券ウーマンが振り返る日経平均の30年、そしてこれからの「3万円台の世界」
日経平均株価の今昔比較
あれから30年の時を経て......
2021年現在、世界的にワクチン接種は始まったものの、新型コロナウイルスの脅威による深刻な状況は続いています。日経平均株価が3万円台に乗せたといっても、ファーストリテイリング<9983>やソフトバンクグループ<9984>など一部の値がさ株が指数を大きく押し上げている感が歪めません。
■30年前とはもはや「別物」になった日経平均株価
2021年2月時点でのNT倍率(日経平均株価÷TOPIX)は高水準ですが、これは、日経平均株価が一部銘柄に引っ張られている一方、TOPIXは追いついていない状態を表しています。つまり多くの人の保有株は大して上昇しておらず、ましてやバブルの実感などないのが本当のところではないでしょうか。
現在の日経平均株価は、上位3社(ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン<8035>)で構成比率の4分の1を占めているため、これら銘柄の動きが大きく反映されます。
そもそも、1989年の日経平均株価と2021年の日経平均株価では、構成銘柄の3分の2以上が入れ替わっており、もはや「別物」と言ってもいいでしょう。
こうした点から考えても、単純に昔と今の日経平均株価を同じ「3万円」という土俵に上げて議論するのは疑問が残るところなのです。
■バリュエーションで見ても現在はバブルではない
次に、30年前と今のバブル度をバリュエーションで確かめてみましょう。
現在の日経平均株価のPERは22倍です(各構成銘柄のPERを平均化したもの)。過去の推移を見ると約12~15倍であり、現在の水準は確かに高いといえます。
しかし、1989年12月末には、実に60倍を超えていました。これは、資金を投じても回収には60年かかるということ。バブル絶頂期には80倍まで達したのです。
グローバルで比較してみても、当時アメリカやヨーロッパなど他市場のPERは20倍以下で、日本株だけが超割高水準でした。会社同士が相互に株式を所有し合う「持ち合い株構造」という日本市場独自の問題が背景にあったとはいえ、いかに高い水準だったかがわかるのではないでしょうか。
■銀行株はいずこ? 激変した時価総額の顔ぶれ
時価総額上位の顔ぶれも、この30年で様変わりしました。
東証1部の時価総額を上から見てみると、1989年は日本電信電話<9432>、日本興業銀行(現・みずほ銀行)など上位10銘柄のうち銀行が6銘柄を占めています。
対して、現在では銀行の姿は消え、トヨタ自動車<7203>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>など、世界で高シェアな商品を持つ企業が並んでいるのが特徴です。
ちなみに、ソフトバンクグループやファーストリテイリングの上場は1994年。30年前当時は、まだ株式市場にいなかったのです。