最新記事

株の基礎知識

テスラに見る株式市場の先見性、知っておくべき歴史の教訓

2021年4月12日(月)16時45分
鳳ナオミ ※株の窓口より転載

そして今、日本の小売売上高は2000年以降まったく増加していないこともあり、グローバルに事業展開しているファーストリテイリング<9983>(ユニクロ)が株式市場ではトップを走っています。

kabumado20210412tesla2-chart2.png

■株式市場が時代を先取りしたITバブル

一方、小売以外で株式市場が先取りした動きとしては、2000年のITバブルが有名です。

当時はパソコンや携帯電話などの情報通信機器がコモディティ化し、急速に普及しました。カラーテレビが普及した時代と比べられることもありますが、IT業界ではその後のインターネット(当時はマルチメディアといわれていました)の爆発的成長という夢物語がまことしやかに語られていた時代でした。

株式市場では、利益どころか売上もほとんどない企業の株価が上昇し、古くからある優良会社の時価総額を超えることもしばしばありました。IT時代を先取りした象徴的な会社として、光通信<9435>やソフトバンク<9984>が注目されました。

kabumado20210412tesla2-chart3.png

よくわからないまま、当時肥大化していた時価総額をベースにM&Aが活発化し、そうした経営手法が注目もされました。結局は行き過ぎた株価形成だったのですが、今考えると、現在の5GやAIなど高度化した情報化社会を暗示していたという意味では間違いはなかったといえるのかもしれません。

(参考記事)日経平均3万円はバブルなのか? 史上最高値へ向けて必要なものとは

時代の潮流を見逃さず、長期視点を

株式投資においては、このように超長期で見たときに、現在起こっていることは決して過去の延長ではなく、まったく新しい事象が起こっているのかもしれない、という視点を持つことが大変重要です。

今のテスラがこの先も同じような企業として存在するかどうかはわかりません。ただ、時代の大変化の象徴銘柄となっている可能性はあります。テスラに続く会社は今後も増加してくるでしょう。それは、日本企業である可能性もあります。

また、時代の潮流を見る上では、株式以外でも、ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産、デジタル通貨)の動きもそうかもしれません。

こうした長期の視点や考え方を取り入れながら投資をすると、目先のちょっとした下落などは、あまり気にならなくなるかもしれませんね。

2021/03/18

[執筆者]
鳳ナオミ(おおとり・なおみ)
大手金融機関で証券アナリストとして10年以上にわたって企業・産業調査に従事した後、金融工学、リスクモデルを活用する絶対収益追求型運用(プロップ運用)へ。リサーチをベースとしたボトムアップと政治・経済、海外情勢等のマクロをとらえたトップダウンアプローチ運用を併用・駆使し、年平均収益率15%のリターンを達成する。その後、投資専門会社に移り、オルタナティブ投資、ファンド組成・運用業務を経験、数多くの企業再生に取り組むなど豊富な実績を持つ。テレビやラジオにコメンテーターとして出演するほか、雑誌への寄稿等も数多い。現在は独立し、個人投資家として運用するかたわら、セミナーや執筆など幅広い活動を行う。


※当記事は「株の窓口」の提供記事です

kabumado_logo200new.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円台を上下、トランプ関税や日

ビジネス

英企業信頼感、1月は1年ぶり低水準 事業見通しは改

ビジネス

基調物価の2%上昇に向け、緩和的な金融環境を維持=

ワールド

米運輸長官、連邦航空局の改革表明 旅客機・ヘリ衝突
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中