テスラに見る株式市場の先見性、知っておくべき歴史の教訓
そして今、日本の小売売上高は2000年以降まったく増加していないこともあり、グローバルに事業展開しているファーストリテイリング<9983>(ユニクロ)が株式市場ではトップを走っています。
■株式市場が時代を先取りしたITバブル
一方、小売以外で株式市場が先取りした動きとしては、2000年のITバブルが有名です。
当時はパソコンや携帯電話などの情報通信機器がコモディティ化し、急速に普及しました。カラーテレビが普及した時代と比べられることもありますが、IT業界ではその後のインターネット(当時はマルチメディアといわれていました)の爆発的成長という夢物語がまことしやかに語られていた時代でした。
株式市場では、利益どころか売上もほとんどない企業の株価が上昇し、古くからある優良会社の時価総額を超えることもしばしばありました。IT時代を先取りした象徴的な会社として、光通信<9435>やソフトバンク<9984>が注目されました。
よくわからないまま、当時肥大化していた時価総額をベースにM&Aが活発化し、そうした経営手法が注目もされました。結局は行き過ぎた株価形成だったのですが、今考えると、現在の5GやAIなど高度化した情報化社会を暗示していたという意味では間違いはなかったといえるのかもしれません。
(参考記事)日経平均3万円はバブルなのか? 史上最高値へ向けて必要なものとは
時代の潮流を見逃さず、長期視点を
株式投資においては、このように超長期で見たときに、現在起こっていることは決して過去の延長ではなく、まったく新しい事象が起こっているのかもしれない、という視点を持つことが大変重要です。
今のテスラがこの先も同じような企業として存在するかどうかはわかりません。ただ、時代の大変化の象徴銘柄となっている可能性はあります。テスラに続く会社は今後も増加してくるでしょう。それは、日本企業である可能性もあります。
また、時代の潮流を見る上では、株式以外でも、ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産、デジタル通貨)の動きもそうかもしれません。
こうした長期の視点や考え方を取り入れながら投資をすると、目先のちょっとした下落などは、あまり気にならなくなるかもしれませんね。
2021/03/18
[執筆者]
鳳ナオミ(おおとり・なおみ)
大手金融機関で証券アナリストとして10年以上にわたって企業・産業調査に従事した後、金融工学、リスクモデルを活用する絶対収益追求型運用(プロップ運用)へ。リサーチをベースとしたボトムアップと政治・経済、海外情勢等のマクロをとらえたトップダウンアプローチ運用を併用・駆使し、年平均収益率15%のリターンを達成する。その後、投資専門会社に移り、オルタナティブ投資、ファンド組成・運用業務を経験、数多くの企業再生に取り組むなど豊富な実績を持つ。テレビやラジオにコメンテーターとして出演するほか、雑誌への寄稿等も数多い。現在は独立し、個人投資家として運用するかたわら、セミナーや執筆など幅広い活動を行う。