最新記事

株の基礎知識

株式投資にも「保険」という概念が存在する

2021年1月16日(土)11時50分
鳳ナオミ ※株の窓口より転載

(3)商品を分散する

商品分散は、その名の通り、さまざまな運用商品に資金を振り向けることで、ひとつの商品のリスクを限定化、またはリスクを乗じることでトータルのリスクを低減化させる手法です。複数の銘柄に投資する、複数の業種に投資することなども商品分散によるリスクヘッジです。

多くの方がごく普通にやっていることかもしれませんが、リスクヘッジという点においては非常に効果的ですので、必ず実践したい手法です。また、商品を分散させることで、ひとつのことに心理が集中してしまうことを防ぐ意味もあります。

●一点集中が損失を招きやすい理由

人間には個別のことにばかり目が向く傾向があり、そうと知らずに大きなリスクや不利な選択をすることがあります、「ナローフレーミングの罠」といわれる現象です。

とある研究で、次の2つの投資行動をとる場合、どういう組み合わせの選択をするか、というアンケートが行われました。

投資行動①:AかBを選びなさい。
(A)確実に240ドルをもらえる
(B)25%の確率で1,000ドルが得られ、75%の確率で何ももらえない

投資行動②:CかDを選びなさい。
(C)確実に750ドルの損失を被る
(D)75%の確率で1,000ドルの損失を被り、25%の確率で何も支払わない

投資行動①では全体の84%がAを選択し、②では87%がDを選択したそうです。しかし、多くの人が選択した組み合わせ(AとD)と、選択しなかった組み合わせ(BとC)で比較してみると、あれ?っとなります。

A+D=25%の確率で240ドルを得られ、75%の確率で760ドルの損失を被る
B+C=25%の確率で250ドルを得られ、75%の確率で750ドルの損失を被る

こうして組み合わせで見てみると、B+CのほうがA+Dよりも明らかに有利であることがわかるのです。つまり、選ぶべきはB+Cの組み合わせということです。ひとつのこと(銘柄、商品)に囚われるとミスを犯してしまいがちな典型例だといえるでしょう。

最大のリスクヘッジは自分の心構え

株式投資の「保険」ということで様々なリスクヘッジを説明しましたが、自動車の運転でも、保険はかけるけれども、それを実際に使用することがないように安全運転を心がけるのが大事ですよね。それと同様に、投資でもトレードでも、安全運転を心がけて平常心を保つ、という心理面が最も重要です。

ただし、ヘッジしたことでリスクが減れば、それだけリターンも減る可能性があるということを念頭に置く必要があります。ある程度のリスクを内包、承知しながら投資行動をとらなければ、リターンは得られないのです。

そのうえで、リスクを生じさせる最も大きな要素は、継続的な行動を取れないことにあると言えます。車の運転と同じように、常に冷静に、同じような行動を取れるような心構えを持っておくことが、最大のリスクヘッジになるのではないでしょうか。

2020/10/06

[執筆者]
鳳ナオミ(おおとり・なおみ)
大手金融機関で証券アナリストとして10年以上にわたって企業・産業調査に従事した後、金融工学、リスクモデルを活用する絶対収益追求型運用(プロップ運用)へ。リサーチをベースとしたボトムアップと政治・経済、海外情勢等のマクロをとらえたトップダウンアプローチ運用を併用・駆使し、年平均収益率15%のリターンを達成する。その後、投資専門会社に移り、オルタナティブ投資、ファンド組成・運用業務を経験、数多くの企業再生に取り組むなど豊富な実績を持つ。テレビやラジオにコメンテーターとして出演するほか、雑誌への寄稿等も数多い。現在は独立し、個人投資家として運用するかたわら、セミナーや執筆など幅広い活動を行う。

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
kabumado_logo200new.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き

ビジネス

トランプ氏、ビットコイン戦略備蓄へ大統領令に署名

ビジネス

米ウォルマート、中国サプライヤーに値下げ要求 米関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中