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若者の現在と10年後の未来:働き方編(前編)──勤務先への忠誠よりキャリア重視、「働き方改革」の課題とは

2020年6月5日(金)14時50分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

現在の職場環境──若者は「働き方改革」の理想と現実のギャップをやや強く感じている


1|20~50歳代全体の状況──「働き方改革」で制度の整備は進むものの、実態は追いついていない面も

次に、現在の職場環境について捉える。調査では、学生や専業主婦・主夫、無職を除く就業者に対して、「女性の活躍推進」や「長時間労働の是正」、「両立環境の支援」、「テレワーク等の柔軟な就労環境の整備」といった近年、働き方改革で進められている項目をあげ、「あてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の5段階でたずねている。

「あてはまる」「ややあてはまる」を合わせた「あてはまる割合」を見ると、20~50歳代の就業者全体では、いずれの項目でも、あてはまる割合は3割台以下である(図表3)。つまり、2020年3月上旬の調査時点では、就業者の6割程度の環境は「働き方改革」が進んでいるとは言えないようだ。

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図表3より、女性の活躍推進をはじめとした性年齢による「不公平感の是正」については、あてはまる割合が3割程度である一方、「結局、長時間働ける人が評価されやすい」も3割程度であり、同程度だ。組織で女性の管理職登用などが進む一方で、依然として、会社に長時間残って仕事をする者ほど評価がつきやすい評価制度や慣習が残っているということなのだろう。

「長時間労働の是正」の面でも、効率化が進められている一方、休暇が取りにくい、あるいは終業直後は帰りにくいといった状況が同程度に確認できる。「就労環境の整備」の面でも同様に、仕事と家庭の両立支援制度が整っている一方で、実際には利用しにくいという状況がある。

つまり、「働き方改革」の各面において、制度や仕組みの整備など進むべき方向へ動いている一方で、実態が追いついていない状況があるようだ。これは、変化の過渡期にあるためであり、今後、「働き方改革」として進むべき方向と実態のギャップが是正されていくとも考えられる。

一方で、3月上旬の調査時点では、テレワーク環境が進んでいる割合は2割にも満たなかったが、緊急事態宣言の影響で、現在、在宅勤務に舵を切らざるを得ない状況が広がっている。そうなると、自ずと評価制度や慣習も変えざるを得ないようになるであろう。

新型コロナ終息後のアフターコロナは、テレワークをはじめ「働き方改革」が大きく前進した状況から始まるだろう。今回の事態を通して、デジタルで案外スムーズにできた、むしろ効率が上がったという業務領域がある一方で、やはりデジタルでは難しい領域もあるだろう。今回の事態を通して、自社にとってのデジタルと非デジタルのバランスが見えてくるのかもしれない。

Kuga_Profile.jpeg[執筆者]
久我 尚子
ニッセイ基礎研究所
生活研究部 主任研究員

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