最新記事

働き方

若者の現在と10年後の未来:働き方編(前編)──勤務先への忠誠よりキャリア重視、「働き方改革」の課題とは

2020年6月5日(金)14時50分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

これらの就労志向の強さを若者について見ると、若者全体では『キャリア重視』志向が高く、『勤務先忠誠』志向が低い(図表2(a))。

すでにバブル崩壊後に大企業神話は崩れており、大企業に就職したからといって生涯安泰ではない。また、グローバル化が進んだことで、今回の新型コロナの事態のように、世界で連鎖的に深刻な状況が生じやすくなっている。様々なリスクが常に潜むビジネス環境となっている。さらに、人生100年時代では就労期は長期化している。このような中で、今の若者は、新卒で就職した企業に一生世話になれるとは考えにくいのだろう。よって、勤務先への忠誠を誓うよりも、自分の能力を磨くことでキャリアを切りひらくという意識が高まっているのではないか。そして、自分のキャリアに軸を置くという考え方はリスク軽減にもつながる。

Nissei_career2.jpg

一方で、性別に見ると、男女で逆の傾向を示す志向がある(図表2(b))。

『業績重視』志向は、女性や年下の上司でも気にしない、男性も育休を取るべきという意味合いを持つが、男性で低く、女性で高い。また、『割り切り』志向は、仕事はお金を稼ぐ手段、できれば働きたくないという意味合いだが、男性で低く、女性で高い。

これらより、今の若い男性でも、依然として「女性は男性を立てるべき」という旧来型の価値観が根強く残っている様子がうかがえる。

一方で、女性では『業績重視』志向が高いが、『割り切り』志向も高い。男性同様に働く女性が増えたことで、職場での男女平等を求める女性が増える一方で、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という旧来型の価値観を持ち、結婚・出産後は家庭を重視したい考える女性も少なくないのだろう。以前に、女性のライフコースの希望を分析した際2、20歳代では、結婚・出産後も仕事と家庭を両立したいという希望が最も多かったが(36.9%)、一旦退職して再就職(19.0%)や結婚後は退職(16.0%)、出産後に退職(12.1%)という希望も一定の割合で確認できた。

――――――――――
2 久我尚子「女性のライフコースの理想と現実」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2018/11/27)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中