日本株が「割安」な理由を2つの側面から考える
●日本株が買われにくい背景
IMF(国際通貨基金)は10月に発表した世界経済見通しで、世界経済の成長予測を3.0%に下方修正しました。背景としては、米中を中心とした貿易摩擦の激化や、イギリスの合意なきEU離脱に対する懸念などが挙げられており、依然として下振れリスクが強いとしています。
一方で、失業率が歴史的な低水準となっているアメリカは、内需主導でゆるやかに拡大する経済環境が続いています。
そんな中で日本では、消費税増税もあり、全体として内需の伸び悩みが続いています。一部には業績好調な企業があるものの、日本株全体で見ると、世界景気の変動による輸出企業の業績の上振れ下振れの影響を受けやすい構造になっています。
こうしたことから、世界の景気の先行きが警戒される局面では日本株は買われにくくなっています。
■日本企業は資本効率が低い
日本株が割安な理由の2つ目には、欧米に比べて日本企業の資本効率が低いことが挙げられます。
企業の資本効率を示す指標にROE(自己資本利益率)があります。これは、企業の利益を株主のお金である自己資本で割って算出します。例えば、自己資本が100億円で純利益が8億円の企業のROEは8%となります。
ROEの数値が高いことは、株主のお金を効率的に使って利益をあげている、ということを意味します。株主からすれば、広い意味では出資したお金に対しての利回りとなるため、ROEが高いほうが魅力的な投資先だと言うこともできます。
そんなROEですが、日本株の平均がおよそ8〜9%であるのに対して、欧米の主要企業では10〜20%となっており、大きな差がついています。
●攻めより守りの日本型経営
なぜこのようにROEの差がついているのでしょうか? いくつかの理由が考えられますが、日本企業ではこれまで資本の効率性について意見されることがほとんどなかった、というのも理由の1つです。
旧来、日本では企業同士による株の持ち合いや銀行による株式取得が多く、そのため、株主から資本効率を問われるようなことはありませんでした。つまり、いわゆる「モノ言う株主」の比率が少なかったということです。
また、欧米企業の経営者は、経営のプロとして迎え入れられており、高額の報酬と引き換えに、結果が出なければドライに契約を切られる関係です。一方、日本企業では、新卒で入社して社内で出世を続けて最終的に社長になる......といったサラリーマン型の経営者も多いです。
サラリーマン経営者からすると、リスクを取って投資を行い利益を伸ばしにいくよりも、利益が出ても内部留保を多めにして、冒険をせずに任期を無事に勤めあげたほうが生涯賃金が高くなることが多いため、攻める経営よりも守りを重視した経営になりやすいのです。
ただし、このような流れも昨今ではかなり変わりつつあります。メガバンクや企業同士による株式の持ち合いは、資本の有効活用を求める株主の圧力により解消の方向に向かっています。また、外国人持ち株比率も上がり、株主の発言力は以前と比べて強くなってきています。