最新記事

株の基礎知識

サウジ石油施設攻撃などの地政学的リスクは株価にどう影響するか

2019年12月5日(木)11時55分
星野涼太 ※株の窓口より転載

アナリストのひとり言

ここでは、地政学的リスクに関連した出来事への「事後的」な対応について解説した。「どうして事後的な対応なのだ。事前に何らかの対処をすればもっとリターンが得られるのではないか」と思う人もいるだろう。

しかし、事前にできることは意外と少ない。まず、予想することは非常に困難だ。当たり前だが、いつ、どの国・どの地域で、どのような事態が発生するかを予想するのは、不可能といっていいだろう。

では、具体的な準備としてできることには、どんなことがあるか。

ひとつはリスクヘッジだ。何かが起こったときに損失を被るのは怖い、というのであれば、保有している銘柄の「プットオプション」を併せて買っておくことができる。平たく言えば、あらかじめ決められた価格で株式を売ることができる権利だ。これにより、株価が下落したときの損失を抑えることができる。

もうひとつは、「リスク回避のために"臭い銘柄"には手を出さない」ことが挙げられる。今回の例でいえば石油関連銘柄だ。

原油相場は中東情勢に大きく影響を受ける。その中東は長らく緊迫した関係が続いている。そうした前提知識のもと、何かが起こったときに影響を受けそうな銘柄はそもそも避ける、という選択肢もあり得るだろう。

このように、地政学的リスクに対して個人投資家ができるのは、何が起こるかを予想することよりも、何か起こったときの損失を回避できるような策を打っておくことになる。事後的な対応とあわせて、リスクへの向き合い方を改めて考えてみてほしい。

[執筆者]
星野涼太(ほしの・りょうた)
外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤めておりました。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することで、読者の皆様がより堅実・効率的な株式投資を実践できるよう貢献したいと思っております。

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
kabumado_logo200new.jpg

20191210issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月10日号(12月3日発売)は「仮想通貨ウォーズ」特集。ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か? 仮想通貨バブルの崩壊後その信用力や規制がどう変わったかを探り、経済の未来を決する頂上決戦の行方を占う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=大幅安、雇用統計・エヌビディア決算を

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロ・円で上昇、経済指標の発

ワールド

トランプ氏、医療費削減に関する発表へ 数日から数週

ワールド

再送EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中