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株の基礎知識

債券バブルが崩壊したら株式市場はどうなるか

2019年11月12日(火)18時35分
山下耕太郎 ※株の窓口より転載

また日本株は、世界的に見ると、グロース株(成長株)というよりバリュー株(割安株)のイメージが強いといわれます。つまり、企業が本来持っている価値(企業の利益や資産に対しての評価)に比べて、株価が低いと考えられているわけです。

金利上昇局面では「金利に対して、その株価はふさわしいか」という視点で考えられるようになるため、好業績で割安な銘柄に見直し買いが入る傾向があります。そうしたことも、さらに株価を押し上げていく要因となるかもしれません。

■良い金利上昇・悪い金利上昇

しかしながら、金利が急上昇するような局面では、反対に、株価に悪影響をおよぼす可能性もあります。なぜなら、株式市場にとって「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」があるからです。

「良い金利上昇」とは、実際の景気回復を伴って、企業業績も回復するような金利上昇です。それに対して、景気回復が伴わない場合は、企業の借入コストの増大につながるため、「悪い金利上昇」となります。

過去の数多のバブルのように一気に債券バブルが崩壊した場合には、金利が急激に上昇することも考えられ、株価にとっては「悪い金利上昇」となる可能性も大いにあります。

資金の流れに思いを馳せる

アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、2019年7月に約10年半ぶりとなる政策金利の引き下げを決めましたが、この利下げは「予防的利下げ」といわれています。つまり、景気が悪化する前に市場心理を改善するために、低金利で大量の資金を供給して安心感を高める、ということです。

しかしながら、2か月後の9月には追加利下げを実施。FRBは「予防的利下げ」という考えを変えていないとされていますが、いつ利上げに転換するかはわかりません。そのとき「債券バブル」がどうなるか......株式市場からも注目が集まりそうです。

世界の金融市場では、株式や債券、為替やその他あらゆる商品の間を、資金が行ったり来たりしています。債券の動向が自分が保有している銘柄の株価に影響することもある、といった視点で広く市場を眺めてみることも、チャンスを摑み、リスクを回避するために必要な知識の土台となるはずです。

[執筆者]
山下耕太郎(やました・こうたろう)
一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
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