最新記事
投資の基礎知識

今さら聞けない、先物取引がマーケットを動かす理由

2019年7月19日(金)11時10分
山下耕太郎 ※株の窓口より転載

Easyturn-iStock.

<「先物主導で日経平均が上昇」などとよく聞くが、どんな人が先物取引をしており、それがどう影響するのか。一般投資家はそれにどう向き合えばいいのか>

先物取引とは?

大豆や金などの商品と同じように、株式市場でも「先物取引」が行われています。まだ収穫されていない作物を取引するように、まだ価格の決まっていない「未来の株」を取引するのです。

あらかじめ定められた(将来の)期日に、特定の商品を、現時点で取り決めた価格で売買することを約束する――それが先物取引(futures contract)です。

■株式市場全体に影響を与える「指数先物取引」

現物株を取引していている人は、日経平均株価やTOPIXなどの株価指数をチェックしているでしょう。日経平均株価は日本を代表する225社の株価の平均値、TOPIXは東証1部に上場している全銘柄の時価総額を対象とした株価指数です。

どちらも個別株の株価を一定の計算方法によって数値化したものですが、実は、これらの値動きに大きな影響を持つのが、それぞれの指数を対象にした先物市場です。日経平均株価を対象にした先物取引は「日経225先物」、TOPIXを対象にしたものは「TOPIX先物」と呼ばれます。

実際、株式市場では「先物主導で日経平均が上昇」といった解説がよくあります。これは、日経225先物がまず買われ、追随して日経平均株価が追随して動く、ということです。言い換えると、指数先物をチェックすることによって、株式市場全体の強弱を総合的に判断することが可能なのです。

■先物市場のメインプレイヤーは外国人投資家

先物主導でマーケットが動く背景には、日経225先物やTOPIX先物の市場参加者が、証券会社や国内外の機関投資家など大口投資家が中心だという事情があります。とくに、大きなシェアを占めるのが外国人投資家です。

売買代金で約6割を占めるなど、現物株でも大きな影響力を持つ外国人投資家ですが、先物市場では7~8割と、さらに大きなシェアを占めます。先物市場においても外国人投資家はメインプレイヤーなのです。

【参考記事】日本の株価に大きな影響を与える「外国人投資家」の正体

先物は流動性が高く、大きな資金を運用する機関投資家でも希望した値段で売買できます。このため、日本株全体に影響を及ぼすような好材料が出ると先物がまず買われますし、悪材料が出ると真っ先に売られることになります。

先物市場を動かす2種類の参加者

先物取引の参加者は、次の2つに分類できます。それが「ヘッジャー」と「スペキュレーター」です。

■現物株のリスクヘッジをする「ヘッジャー」

ヘッジャーは、現物株のリスクヘッジとして先物を取引する市場参加者です。リスクヘッジとは、将来の不確定要素を排除すること。そして、先物取引のヘッジには、買いヘッジと売りヘッジがあります。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中