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なぜ、日本は<異端>の大学教授を数多く生み出したのか

2019年6月27日(木)19時10分
松野 弘(社会学者、大学未来総合研究所所長)

こうした日本特有の大学教員人事が今なお残存しているのは、学問探求の場としての大学の役割が日本社会ではまだ認知されていないことを示しているといってもよいだろう。

米国でも、大学教授と連邦政府の高級官僚との密接な人事交流はある。ニクソン・フォード政権の元国務長官(1973-1977年)兼大統領補佐官(1969-1975年)のヘンリー・キッシンジャー氏(96歳)は、ハーバード大学大学院で博士号を取得し、国際問題の研究者として活躍していたし、コンドリーザ・ライス氏はジョージ・W.ブッシュ(ブッシュ・ジュニア)時代に国務長官(初めてのアフリカ系米国人女性の大臣、2005-2009年)兼大統領補佐官(2001-2005年)を務め、元スタンフォード大学教授である(現在も、スタンフォード大学教授)。

この2人に特徴的なのは博士学位をもち、学問的業績や活動が評価されて連邦政府の高級官僚として遇されており、国際関係問題の専門家として登用されたことであった。日本と米国のこの違いを読者の皆さんには理解していただきたい。

作家・評論家の世界から、社会人教授へ

作家や評論家という職業は、雑誌等への原稿執筆や著作の刊行によって生活費を得る生業であるとともに、一般大衆に文化の価値を伝える文化伝承者でもある。

あの明治の大文豪、夏目漱石は東京帝国大学講師で、京都帝国大学教授として招聘されながらも辞退し、小説を書くことを本業として選んで大学を辞め、朝日新聞の専属作家として作家の道を歩んだ「作家の鑑」ともいえる存在である。

ところが,最近の作家は本業では稼ぎがよくないのか、テレビのバラエティ番組でコメンテーターとして出演したり、テレビのCMに出たりなどして、作家の仕事が本業なのか、余技なのか、よくわからない人たちが増えてきた。

とりわけ近年は1990年末以来の長引く出版不況のせいか、作家専業では飯が食えない人たちが急増している。そのため、安定収入(最低でも、専任教授であれば年収1000万円)を得るために、ツテを頼って大学に専任教授としてもぐり込んで、作家や評論家を兼業している人が多い。

例えば、作家の島田雅彦氏は1998年に近畿大学文芸学部助教授となり、その後、2003年に新設学部である法政大学国際文化学部教授となっている。同じく作家の中沢けい氏も2005年から法政大学文学部教授である。

筆者と大学時代(早稲田大学)に同世代で、かつて『僕って何』(河出書房新社、1977年)で第77回芥川賞を受賞した三田誠広氏は大学教授になりたくて、通常は1回しかできない早稲田大学文学部文芸学科の客員教授を2回も(1997-2001年、2005-2007年)務め、ようやく近年(2011年)、61歳で武蔵野大学文学部教授となっている(2019年度より同大名誉教授)。

この点、異色なのは、早稲田大学文学学術院教授の堀江敏幸氏である。彼は早稲田大学第一文学部フランス文学科を卒業後、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学という経歴で、芥川賞(『熊の敷石』講談社、2001年)をはじめとするさまざまな文学賞(三島由紀夫賞[1999年]、川端康成文学賞[2003年]、谷崎潤一郎賞[2004年]、読売文学賞[2006年・2010年]、伊藤整文学賞[2012年])を受賞している。

彼はフランス文学研究とともに、小説や評論を執筆し、高い評価を得ているのである。その点、三田氏とは対照的である。

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