最新記事

教育

テスト問題を予想さえすれば、誰でも東大に合格できる?

2018年4月14日(土)11時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

テストの点=予想が当たった確率

学校のテストというのは、授業で教えられた範囲からしか出題されない。これは高校・大学受験についても言える。法律で「学力検査」が禁じられ、あくまでその学校に適するかどうかを測る「適性検査」を課すのは中学受験だけ。大学受験はたとえ東大であっても、基本的には学校で習う範囲内だけの勉強をすればいい。

谷川氏によれば、もしも小学生で成績が「中の上」まで届かないとしたら、その原因はただひとつ。勉強量が足りないわけでも、やる気や集中力が足りないわけでもない。教師の話をよく聞いていないからだ。そして、テスト前なのに勉強をしない理由は、勉強のやり方が分からないから。

授業をちゃんと聞いていれば、何がテストに出るかを予想できる。そうすれば、どこを勉強すればいいかも分かる。テストの点とは、実は予想が当たった確率なのだ。そのためには教師の話をよく聞き、教師の気持ちになって考えてみればいい。それが「勉強とは暗記ではく他者理解」という理由だ。

ちなみに教師がテストを作成する際には、100点満点で65点が平均点となるように作ることが多いらしい(あまりに簡単では「突出してできる子」と「できる子」の見極めが困難になるため)。世の中のテストの平均点が65点前後になるのは決して偶然ではなく、出題者がそう意図しているのである。

中学生の頃、谷川氏が成績アップのコツとして友人に「テスト問題を予想すればいいんだよ」と教えたところ、その友人は父親に「けしからん!」と怒られたそうだ。それでは本当の学力が身につかない、と。

だが谷川氏に言わせれば、テスト問題を予想することは決してズルではない。それどころか効率のいい勉強法だ。なぜならテストでは、出題範囲における「重要」かつ「本質的」な事項が「バランスよく」問われる。予想することで出題範囲の内容と重要性を決定づけながら網羅できるのだから、それが学力や実力でなくて何なのだろうか――と。

東大生はちっとも苦労していない

誰だって良い成績を取れればうれしい。それが意欲につながり、学びの習慣となり、将来の可能性を広げてくれることもある。良い成績が欲しいなら、そのために適切な努力をすればいいはずだ。

勉強とは本来、楽しいものであり、学ぶことに対する好奇心と達成欲のない子供などひとりもいない、と谷川氏は言う。そして、苦労すれば良い成績を取れるという誤解は、日本社会に長時間労働を生む弊害になっているとも指摘する。だが、そもそも「努力」と「苦労」は別物だ。


(東大に入って東大生をたくさん見たとき)まずわかったのは「どうやら、勉強で苦労してきた人は一人もない」ということでした。
 努力をしてきた自負がある人はたくさんいました。ガリ勉していた人はいたし、たいして勉強していない人もいました。ただ、「勉強がつらかった」とか「机に向かうのが嫌い」とか「もう二度と勉強したくない」などと言う同級生は一人もいなかったのです。(48〜49ページ)

会社で評価され、いい給料をもらい、出世するために必要なのも、本来は苦労ではなく努力のほうだろう。上司が認めてくれないと愚痴をこぼす前に、上司が自分に何を求めているのか、上司に立場になって考えてみるのもいいかもしれない。


『賢者の勉強技術
 ――短時間で成果を上げる「楽しく学ぶ子」の育て方』
 谷川祐基 著
 CCCメディアハウス


ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米NASA、アルテミス計画で複数社競争の意向=ダフ

ワールド

トランプ氏、習氏と公正な貿易協定協定に期待 会談で

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏との会談「前向き」 防空

ワールド

ゼレンスキー氏、ウクライナ支援「有志連合」会合に出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 7
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中