「社員の生産性」より「より良い仕事体験」が主流に
仕事と生活のプラットフォームが同じになった
前編で、オフィスの進化のステップとして、効率を重視する「テーラリスト・オフィス」、コミュニケーションを重視する「ソーシャル・デモクラティック・オフィス」、人やモノをデジタルでつなぐことを重視する「ネットワークド・オフィス」があること、さらに都市との有機的なつながりやワーカーの生活と仕事の融合を重視する「フュージョンオフィス」の時代へ進んでいくだろうと説明しました。
WeWorkのような企業が今やWeLiveに移行しようとしているのは驚きではありません。「生活×仕事場」の試みは1990年代後半にも見られました。今では多くの人が家で仕事をしていますし、出勤前にもメールチェックをしたりします。オフィスに着いたら着いたで仕事の合間にフェイスブックを見たりする。スマートフォンには部下からの報告メールも、友人からのテニスの誘いのメールも入ってきます。
要は仕事と生活のプラットフォームが同じになったということです。ネットワークド・オフィスからフュージョンオフィスへの変化は視覚的にはとらえにくいですが、本質的な部分では大きく変化していると思います。
好むと好まざるとに関わらず、ますます多くの人が週末に働くようになるでしょう。「企業が自分の人生を支配している」とか「制度が自分の人生を支配している」と嘆くことになるかもしれません。終業ベルが鳴って退社すれば仕事から解放された時代はもう過去のもので、今はそうとは限らない。常に仕事がそばにある状態なので、とても複雑です。
ビジネスの技術的側面だけでなく、社会的側面も管理するのがスマートビル
技術の進化がワークスタイルに与える変化ということでいえば、人工知能の発達は1つのトピックといえるでしょう。一部の職種は人工知能に取って代わられることもあるでしょうが、これは取り立てて新しい現象ではありません。これまでも機械化により事務員や工場の組立工が転職を余儀なくされてきたわけですから。
本当に興味深いのは人工知能、ニューラルネットワーク、インタラクティブ・コンピューティングといった技術が、ワークプレイスにどんな波をもたらすかということです。コンピュータを増強された知能とみなして、人間が制御し、管理し、活用して、より多くの仕事が生まれる可能性もあります。
全てがネットワーク化されたスマートビルでも、セキュリティやエネルギー制御などにおいてロボットが活躍することになるでしょう。IoTの進化により、その変化は避けられないと思います。