ビットコインを買った真面目な税理士の末路
ケネディと靴磨きの少年の話
アメリカの金融の中心地・ウォール街の片隅で、この「サイン」は現れました。
第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディの父、ジョセフ・ケネディは政治家であり、証券取引委員会の初代委員長を務めた経験をもつ有名な投資家でもありました。
1929年10月、アメリカはバブルの真っ只中。ケネディがニューヨークの街頭で靴磨きの少年に靴を磨かせていると、「いまこの株が上がりますよ!」「相場はまだまだ上昇し続けるから、買わないと損をしますよ」などと、まったくの素人であるはずの少年が雄弁に語ります。その姿を見て、ケネディは保有するすべての株式を売却しました。
その後ほどなくして相場は大暴落し、バブルは崩壊することとなりました。それが歴史に残る「暗黒の木曜日」であり、ウォール街大暴落、さらには世界大恐慌への幕開けでした。ダウ工業株平均は1か月にわたって下げ続けた後、上げ下げを繰り返しながら、1932年7月8日に最高値から89%下落の41.22ドルを付けるまで下げ続けました(最高値はの1929年9月3日の381.17ドル)。
大半の投資家が大きな損失を出すなか、ケネディは「なんの知識もない靴磨きの少年の言動」によって無傷でいることができた――いまもウォール街のみならず投資の世界で語り継がれる伝説です(実際には「株式市場はそろそろ危ない」というパトロンの忠告に従ったとも言われていますが)。
この話にはいろいろな教訓が含まれていますが、相場の歴史(バブル崩壊の歴史)は何度も繰り返し、このような顛末を私たちに見せてくれます。
税理士が買ったビットコインはいま......
では、私に相談してきた税理士はどうなったでしょうか? 少しチャートを進めてみましょう。
中国がビットコインについての規制強化を行ったことや、米JPモルガン・チェースの最高経営責任者(CEO)が「ビットコインは詐欺だ」といった発言をしたことなどもあり、一時30%も急落することとなりました。
その後、急激に戻しているため「崩壊」とは言えませんが、やはりこれは約90年前の「靴磨きの少年」と同じだと言えるのではないでしょうか。驚くべきことに、素人(=税理士)が重い重い腰を上げ、満を持して市場に参加したところが見事に天井(高値)になっています。まさに、歴史は繰り返す。
理由のひとつは「この事実を知るプロがマーケットには存在し、狙っている」からです。つまり、相場が急上昇した最終局面に「素人のカモ」が参入してくるや、その買い玉(買いのポジション)に売り玉(売りのポジション)を当てて高値で売り抜けるのです。それをきっかけに急落が急落を呼び(いわゆる「投げ売り」)、大暴落につながるのです。