日本のモデルは「合理的」。安定財源として期待される「たばこ税」はどうあるべきか?
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では、今後の課税方式はどうするのが望ましいのか。
「たばこ税に関しては、これが正しい、1つの正解である、という制度は存在しません。仮に日本ですごく効果が出た仕組みを他の市場で取り入れたとしても、うまくいかないケースも多々あるでしょう」
「正解」がないのがたばこ税、だからこそ取り組み甲斐もある
日本においては、課税方式を大きく変える必要はないというのがサイモンの見立てだ。「日本では前回の5か年計画がうまくいっていますから、防衛財源のために、たばこ増税を実施するのであれば、現在の課税方式を変更せずに実施していくのがベストではないかと見ています」
ただ、たばこ税を管轄する財務省では、さらなる税収増を見据えた施策案も示している。近年売れ行きを伸ばしている、加熱式たばこの税率を大きく引き上げ、紙巻たばこと同等の水準に揃えようとするものだ。
「国によって課税方式は異なりますが、他国と比較して日本の紙巻たばこの税率は低い一方で、前回のたばこ増税の際の課税方式の変更により加熱式たばこはすでに高い状態にあります。また、日本の場合は紙巻たばこと加熱式たばこの税額が事実上連動する方式になっています。紙巻たばこと加熱式たばこからの税収を合わせたトータルの税収がうまく着地してきているわけです。そこに手を入れて、加熱式たばこのみを課税強化するのは得策ではないと分析しています」
加熱式たばこの需要が増えているのは日本だけではない。世界的な潮流としては、自身や社会等へ配慮した代替製品へ移行する、「ハームリダクション」を前提とした消費者動向が確認されている。
「たばこ税率の上下は、消費者のマインドや需要に大きく影響します。それだけに、確たるデータを伴わない皮算用を基に設計してしまうのは、リスクが大きいと思います。繰り返しになりますが、日本においては2022年度までの「5か年計画」が成功しているわけですから、当面はそれを踏襲するのが最適解ではないか、というのが我々の答えです」
前回の日本のケースは、海外からも注目されているという。紙巻たばこと加熱式たばこをバランスを取りながら増税するパターンでの成功例だからだ。
「全ての国にフィットする制度が存在しないのがたばこ税ですが、だからこそ取り組み甲斐のあるテーマでもあります。日本はもちろん、各国におけるたばこ税制の行方を引き続き注視しながら、あらゆるステークホルダーにとってメリットのあるサステナブルな方法を模索していきたいと考えています。全ては、『バランス』です」
●問い合わせ先:BATジャパン
https://www.batj.com
サイモン・トラスラー(Simon Trussler)
BAT 財政当局および国際貿易グループ責任者
20年以上にわたり、複数の経営コンサルタント会社で経済コンサルタントとして民間および公共部門の幅広い組織へ戦略に関するアドバイスを提供。2017年にBATに入社、新カテゴリー製品の税務/国際貿易部門の責任者に就任。2024年より現職を担当する。