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33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...いつしか「懐かしいだけの、美しい記憶の中の存在」に

2024年9月12日(木)10時45分
谷頭 和希(チェーンストア研究家・ライター小幡 績)*東洋経済オンラインからの転載

さて、そうなると大変なのが津田沼駅前にあった商業施設たちである。そこで戦争をしていると思ったら、予想しないところで客を取られてしまった。折しも時代は、GMSの時代からショッピングモールの時代へと移り変わっていくさなか。津田沼に数多くあった商業施設は、また一つまた一つと閉店していった。

その跡地に商業施設ができる場合があったが、そこには多くの場合、生活に密着したテナントが入る場合が多い。例えば、2007年に閉店した丸井津田沼店のあとにできた「mina津田沼店」には、ダイソーやJINS、AOKI、業務スーパーなど、さまざまなチェーンが入っている。まさに、特別感のあるラインナップというよりも、「住む」街として、そこに住んでいる人たちに特化したラインナップへと変わっていったのだ。

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mina津田沼店に入るテナント(筆者撮影)

【街の変化より、変化が遅かったヨーカドー】

こうして津田沼の街は変化を続け、それに合わせて「津田沼戦争」も収束、街の形に合わせるようにして、商業施設も変化していった。

ところで、唐突だが、ここで思い出すのが、最近私が精力的に取り組んでいる「渋谷カフェ少なすぎ問題」である。これは、土日の渋谷では、どんなチェーンカフェも混んでいることを指摘したものだ。この要因には、コロナ禍を経てリモートで仕事をする人が増えたことや、都市自体に人がゆっくり休める場所が少ないことが原因だと考えている。

しかし、その大元にあるのは、「人の変化」と「チェーンストアや商業施設の変化」、さらには「街全体の変化」のスピードが、それぞれ異なっていることだ。

人間の流行は、わずか数年程度で移り変わっていくのがほとんどだ。それに対し、商業施設などは、すぐに出店できるものでもなく、本部による出店計画や工事などを経て、やっと出来上がる。人々の興味よりも変化のスピードが遅いのだ。もちろん、チェーンストアの入れ替わりも、人々の興味の変化に遅れて生じる。

そして、それらを包み込む街ともなれば、もっともっとその変化は遅い。渋谷の再開発は2012年から2027年まで、15年がかかっている(というか、それ以上になりそうでもある)。

一方で、コロナを経て、人々の変化は以前にも増して早くなっている。リモートワークが前提となり、若者の消費も「モノ消費」から「コト消費」へと変わった。

にもかかわらず、街自体はまだ変化の途中。都心にカフェが足りない問題もまた、こうしたサイクルの問題だと言えるのだ。

そして、これは、今見てきた津田沼でも同様である。近隣にショッピングモールができたことによって人々の行動パターンが変わり、他の商業施設は変わってきた。

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ヨーカドーの後ろにはイオンがあり、時代の移り変わりを象徴するかのよう(筆者撮影)

しかし、イトーヨーカドーだけは、その変化のサイクルに乗り遅れてしまったのではないか。

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