最新記事
ビジネス

ECサイトの「カゴ落ち」率は68.8% 顧客に見放される企業と顧客を惹きつける企業の違い

2024年7月23日(火)06時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

希望する決済方法にサイトが対応していなかったからかもしれない。

あるいは、ウェブサイトに不具合が多かったからかもしれない。

理由はどうあれ、顧客はすでに去ってしまったのだ。

顧客消費チェーン

何がおかしくなっているのかの分析に役立つ手法の1つに、私が「顧客消費チェーン」と呼んでいるものがある。顧客は何かを購入するにあたって、一連の非常に多くの行動をとる必要がある。それぞれの行動は、鎖(チェーン)の輪の1つとして捉えられる。

出発点は、自分が何を必要としているのか、顧客自身が気づくことだ。ちなみに、それはあなたも提供できるものだ。顧客は入手先を探し、候補を検討する。

その後、購入、支払い、契約といった行動に移るかもしれない。こうした行動の輪がつながったチェーンは、あなたの組織と顧客との関係を表しているものとみなせる。

次の顧客消費チェーンの図は、サービス業での一例だ。細かい点は省略して消費経験の全体像を示したチェーンでさえ、輪の数はかなり多くなる。

newsweekjp_20240722104641.png

『Duke CEマネジメントレビュー』86ページより

このチェーンから、先ほどの問題が顧客の立場から見えてくる。

まず顧客は、このチェーンの初めから終わりまで、各段階がおおむね自然に次の段階へとつながっている、1つのまとまりとして認識している。

一方、あなたの組織の人々は、自分が任されている段階しか見ていない場合が多い。組織では効率性を考えて、同じ系統の仕事を同じ「部署」、つまり同じ業務上の区分にひとまとめにしてしまう。

すると、次のようによい面もあれば問題点も出てくる。

ファイナンス部は、顧客の信用度や完済までの期間などについては、すべて把握している
マーケティング部は、顧客が商品やサービスを実際にどうやって利用すればいいのかについては、何の知識も持ちあわせていないかもしれない
法務部は、将来的に責任を問われるかもしれない危険性から、あなたを守ることにかけては最高の手腕を発揮できるかもしれないが、彼らが使っている専門的な法律用語が顧客にどれほど冷淡な印象を与えているかについて、まったく気づいていない可能性がある
ウェブデザイナーやプログラマーは、あなたのウェブサイトのブランド戦略や位置づけは理解しているかもしれないが、そのウェブサイトを顧客の視点で見たことは一度もない

組織が一体となって顧客中心の対応をするために、デジタル・テクノロジーを活用する


デジタル・テクノロジーをうまく活用すれば、これまでのやり方を再考できる。

センサーを導入すれば顧客が消費チェーンを進んでいく様子をセンサーがモニターして、危険な兆候があれば知らせてくれる。評価指標をうまく定義できれば、組織は適切な先行指標に従って修正措置をとることができる。

たとえば、創業当初からデジタル・テクノロジーを駆使している「真の顧客中心主義組織」として有名なアマゾンを見てみよう。

巨大小売企業である同社については、コリン・ブライアーとビル・カーが著書『アマゾンの最強の働き方』(ダイヤモンド社)で実例をあげながら詳しく描いている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 9
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 10
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中