パリ五輪、「過去25年のスポーツイベントで最も予約低調」...価格高騰だけでないその理由
7月4日、 パリ五輪は経済効果にも期待がかかっているが、実際には旅費や宿泊費の高騰、フランスの政情不安や治安への懸念から多くのスポーツファンや観光客がパリ行きを避けており、予約は低調だ。写真は6月、パリに掲示された五輪のポスター前を警備する警察官(2024年 ロイター/Pawel Kopczynski)
パリ五輪は経済効果にも期待がかかっているが、実際には旅費や宿泊費の高騰、フランスの政情不安や治安への懸念から多くのスポーツファンや観光客がパリ行きを避けており、予約は低調だ。
航空券データ会社フォワードキーズによると、6月6日以降の期間はパリ行き航空券の予約が前年比10%増にとどまる見通しとなっている。2016年リオ大会で海外からの訪問者数が115%増加したのとは対照的で、コロナ禍中に開催された東京大会でさえ20%増だった。
コンサルタント会社MKGのデータからは、五輪開幕前の数週間のホテル予約は昨年から減少しており、6月は約25%の減収となったことが分かる。
旅行代理店やスポーツファン、チケット販売業者への取材からも、熱烈な五輪ファンでさえパリ行きに消極的な実態が見えてきた。
米国を拠点とするスポーツ旅行代理業者のアラン・バチャンド氏は「過去25年間のほとんどのスポーツイベントに比べ、最も低い予約状況になっている」と言う。
こうした状況からは、国際的なスポーツ大会の主催都市が直面する課題が浮かび上がる。大都市はただでさえ混雑して物価が高いため、価格に敏感な消費者は避けて通るようになっている。
予約が低調な背景には、コロナ禍後、旅行者が商品よりも体験にお金を使いたがるようになった流れが、諸々の値上がりを受けて鈍りつつある、という要因もある。
ロンドンは2012年の五輪で似たような経験をした。通常なら夏のロンドンは旅行者であふれかえるが、この年は3%増にとどまった。
とはいえ、パリにとって痛手なのは間違いない。最近のある調査では、五輪によるパリ一帯への経済効果は最大120億ドル(1兆9350億円)と試算されている。
<夜行バスで節約>
エマ・マティソンさん(29)は、8月9日にリヨンで開催されるサッカー女子の3位決定戦のチケットを持っており、翌日にパリで開催される決勝戦のチケットも手に入れたいと考えている。
だが試合後は宿泊せず、夜行バスでロンドンに戻る予定。1泊300ユーロ(5万2250円)以上の宿泊費は予算オーバーだ。「もっとリーズナブルなら、女子の試合やグループステージの試合をもっと見たかった」と悔しがる。
パリ市観光局によると、7月26日から8月11日までのホテルの平均価格は昨年から70%急騰し、1泊342ユーロになった。