最新記事
ビジネス

なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったのか...「働き損」の職場は、どうすれば変えられる?

2024年6月5日(水)18時57分
flier編集部

「この景色を後輩に見せてあげたい」

──管理職や個人が働きがいを感じられるようになるための「個人としての解決策」とはどのようなものですか。

半径3メートルの人たちによい働きかけをしていくことです。管理職向けの研修や講演では、「職場でSOSを出しなさい」と伝えています。たとえば、年上の部下は、本当はあなたを助けたいと思っているけれど、プライドが邪魔してできていないだけ。だから上司の側から、その人に応援団になってもらうつもりで、助けを求めてみる。そうすると彼らは「頼りにされた」と思って力を貸してくれます。最初の一歩は、誰よりも職場のみんなに挨拶をしていくとか、ちょっとしたことでいい。その積み重ねで半径3メートルの世界を変えられるんですよ。

自分の傘がないときには、「傘を貸してください」と素直にいえばいいし、雨に濡れている人がいたら「この傘使って」と傘を差し出せばいい。そういった心の距離感の近い関係性があってこそ、人は踏ん張ることができます。真の自立は依存の先に存在します。

私の同級生で、会社の社長になった人や会社で初めて女性役員になった人がいます。彼女たちが共通して言うのは「この景色を後輩に見せてあげたい」ということでした。管理職は人の人生に深く関わって、影響を与えられるすばらしい仕事。そして管理職自身が部下の育成などを通じて自身の内面を磨いていくことになります。

こうした前向きなビジョンをもてるよう、30代のうちに「環境で人は変わるし、自分も環境を変えることができる」という実感をもてるといいですね。管理職は決して罰ゲームではなくなるし、「働くことって意外とおもしろい」と思う人たちも出てくるんじゃないかなと思います。

──管理職やこれから管理職になる方にとって前向きになれるメッセージをありがとうございました!


『働かないニッポン』著者・河合薫氏

河合薫(かわい かおる)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在は「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究にかかわるとともに講演や執筆活動を行う。著書に『他人をバカにしたがる男たち』『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』『50歳の壁 誰にも言えない本音』など。

◇ ◇ ◇


flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。

flier_logo_nwj01.jpg

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪ビーチ銃撃の死者15人に、容疑者は父と息子の2人

ビジネス

中国、来年さらに積極財政運営 超長期特別国債発行

ワールド

香港最後の民主派政党解散、中国政府締め付けで活動不

ワールド

ゼレンスキー氏、NATO加盟断念の用意 ドイツで米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中