「給料が低いので辞めます」は7~8%!「低い」の具体的不満には実は2種類ある
あがってきた言葉をそのまま受け止めて判断するのではなく、その背景・意図・文脈を正しく把握するための確認の場として、「対話の時間」を設けることは重要です。
■労働条件面について、伝え方は具体的に
また、給与や役職など目に見える労働条件面について、安易に「上げる」「変える」と伝えずに、本人の捉えかたや、他者への影響、社内全体への見え方など、幅広く捉え判断していくことが必要です。
「言った」「言わない」でトラブルになるケースもありますが、契約は口頭で伝えたことであっても成り立つ場合があるので注意が必要です。
とくに伝える側は「場合によっては給与を上げることも考えてよいけれども......」と幅を持たせた言い方をしたとしても、相談する側には「場合によっては」という幅が受け止められず、「給与を上げることを考えると言ってくれた」と受け止めてしまうこともあります。
先々に期待する役割(○○業務を担えるようになって半年が経過した場合など)や、分かりやすい条件(チームメンバーの離職を一年間抑えることができた場合など)を明確に示し、その内容を当人にも理解させた上で、話を進めるようにしましょう。
冒頭で紹介したケースのように、「その人だけに特別対応をしたことが、他のメンバーにも伝わってしまい、社内の雰囲気が悪くなった」ということも起こりえます。「この件は、あなただけに対応することだから、他の社員へは言わないように」と念押しをするとしても、それを義務として課すことは難しいでしょう。
まとめ
本記事では「給与を理由に辞めてしまう社員」の対応法について解説しました。「給与が低いから辞めたい」と退職届が提出された場合、その言葉をまっすぐに受け止めるだけでなく、背景や意図を確認することが重要です。
また、「給与を上げる」と伝える際には、齟齬が起きないよう具体的な条件や役割を示すことが必要でしょう。人材不足の中、持続可能な経営をするためにも、事態に直面した際は以下の要点をおさえた上で、対応していきましょう。
・まずは話を聴く場を持ち、背景・経緯・意図を深掘りして把握する
・その上で会社としての判断を示す
・気持ちを訴えてきたこと自体に意味があると受け止め、その後のキャリア支援や業務管理を通じて密にフォローしていく
また、給与を理由とした退職希望者が続出している場合は、根本的な解決を図る必要があります。
まず、経営者は目をそらさず現状を認識しなければなりません。場合によっては外部のアドバイスも受けながら、組織改革を速やかに検討したほうがよいでしょう。その際、社員に向かって方針を発信していくことも大切です。
・同業他社の給与をリサーチのうえ新たな給与水準を検討する
・給与制度や評価制度を見直し、公平感のある制度を再構築する
[執筆者]
西田周平
有限会社人事・労務チーフ人事コンサルタント
日本大学法学部卒業後、食品メーカーを経て現職。従業員が500名を超える会社から数名の会社まで幅広い企業のES向上型人事制度作成に数多く携わるほか、多くの労働基準監督署の是正勧告対応などの労務トラブルに対応し、その経験からリスク管理に長けた就業規則を作成するなど、中小企業の人事・労務に精通している。最近は、執筆や講演も精力的に行っている。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら