最新記事
金利

住宅ローンが払えず食事を抜くアメリカ人が増えている!?

Americans Skip Meals to Afford Homes

2024年4月9日(火)16時03分
オマー・モハメド

家か食事かの選択に迫られるアメリカ人が増えている。その訳は? STEKLO-Shutterstock.

<米政策金利の高騰で住宅ローン負担が急増、支払いに窮して食事を抜いたり医者に行くのを先延ばしにする人が2〜3割に達している。今や余裕で家を買うには年収約11万4000ドルが必要という>

アメリカ人は今、雨風をしのぐ屋根付きの家を失わないために、休暇旅行や食事を犠牲にしていると、不動産仲介プラットフォームのレッドフィンの最近の調査結果は示している。

調査対象となった人のうち約5分の1(22%)は、家賃や住宅ローンの支払いに充てるためにお金を節約し、食事をせずに我慢した経験があると回答した。

 

さらに、全体の3分の1以上の人(34.5%)が、高騰する住宅ローンや家賃の支払いが不安で、休暇を取りやめる決断をしたと答えている。一部のアメリカ人は、副業を始めたり、医師にかかるタイミングを遅らせたり、診療回数を減らしたりすることを余儀なくされている。

もう車が買えなくなったアメリカ人──年収10万ドルの壁

レッドフィンの経済リサーチを率いるチェン・ジャオは、以下のように語っている。「アメリカでは、住宅費が家計の大きな重荷になっており、一部の家庭では、食事や医療といった、生きていく上で不可欠な支出もままならない状況が起きている。こうした家庭ではやむを得ず、大きな出費を諦めたり、時間外労働をしたり、周囲の人から借金をするなどして、月々の(住宅費の)支払いを何とかやりくりしている」

金利は高止まり

住宅ローン金利は2023年に、21世紀に入ってから最も高い8%というピークに達し、高止まりの状況が続いている。2024年に入って一時は多少下落したものの、この数週間で再び上昇し、現在は7%前後のレベルにある。レッドフィンの調査によると、金利が6.79%だった3月31日の時点で、月々の住宅ローン支払額の中央値は2700ドルで、前年と比較して9%以上上昇している。

一方で、住宅ローンのコスト上昇によって、住宅購入希望者が購入の決断を遅らせ、賃貸市場に流入するという現象も起きており、これが月々の家賃を押し上げている。2月には、貸し手側の提示する家賃が2%以上上昇し、月額2000ドルの大台に近づいた。レッドフィンでは、2023年初頭以降で最高の伸びだと指摘している。

「平均的なアメリカの家を購入できる金銭的余裕を確保するには、買い手は(年に)約11万4000ドルを稼ぐ必要がある。これは、平均的な家計の年収と比べて35%も高い金額だ。しかしこれでも、2023年10月と比べると事態は改善している。当時は、必要な年収額は史上最高の12万1000ドルに達し、家計収入の中央値と比べて51%高い金額となっていた」という。

レッドフィンでは2024年2月、調査対象の約3000人のうち、住宅費の支払いが難しいと感じている1490人以上の人々を対象に意識調査を行った。

それによると、ミレニアル世代では約13.5%が、退職後に備えて貯えていた資金を取り崩して月々の住宅費の支払いに充てる決断をしていた。また、ベビーブーム世代の人では、4分の1以上が同様の決断に踏み切っていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国最大野党の李代表に逆転無罪判決、大統領選出馬に

ビジネス

独VWの筆頭株主ポルシェSE、投資先の多様化を検討

ビジネス

日産、25年度に新型EV「リーフ」投入 クロスオー

ビジネス

通商政策など不確実性高い、賃金・物価の好循環「ステ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中