酷暑続いた今年の夏、労働者保護の法整備進まず テキサスでは議会が規制導入阻む法案を可決
記録的な猛暑に襲われた米国。だが、農場や建設現場のように厳しい環境で働く人たちが暑さを逃れるすべはほとんどない。写真は8月、テキサス州ヒューストンで、屋外作業中に水分を補給する労働者(2023年 ロイター/Adrees Latif)
記録的な猛暑に襲われた米国。だが、農場や建設現場のように厳しい環境で働く人たちが暑さを逃れるすべはほとんどない。健康どころか生命にさえ関わるリスクがあるのに、休憩を取れない、あるいは休憩することをためらってしまう例も多い。
啓発団体によれば、米国において気候関連の死因として最も多いのが酷暑であるにもかかわらず、労働者の保護が欠落している状況が広く見られるという。水分補給や日射しを避けるための休憩を取れないことが、より深刻な症状や死亡の原因になっている。
テキサス州オースティン在住の5児の母親、エバ・マロカンさん(50)は、建設や清掃などの現場で働いているが、気温の上昇に対して自分の身を守れないと感じることが多い。
今年は状況がひどく悪化した、とマロカンさん。脱水症状を起こして医師の診断を受けなければならなかったことや、最近エアコンのない住宅での作業後に咳が止まらなくなったことを語ってくれた。
だが、仕事を休めば済むとは限らない。
移民労働者の権利擁護に取り組む「ワーカーズ・ディフェンス・プロジェクト」のメンバーでもあるマロカンさんは、「仕事を休みたくない場合もある。責任もあるし、顧客の了解を得られるとは限らない」と言う。
「自分は母親であり、そういう仕事の給料で食いつないでいる。働くのをやめたら誰が私の代わりに稼いでくれるのか」
米国の州のうち、労働者のための具体的かつ包括的な暑さ対策を法制化しているのは、カリフォルニアやコロラド、ミネソタ、オレゴン、ワシントンなど、全体の10分の1程度の州にすぎない。しかも、労働問題の啓発活動家によれば、そうした各州の対策も道半ばだという。
こうした労働者保護のための規制はコスト増につながり、ビジネス上の負担になるとして、業界団体が反発した例もある。
労働省労働統計局によると、2011年から21年にかけて、暑さにさらされる環境を原因とする労災死亡事故は436件だった。