最新記事
労働

酷暑続いた今年の夏、労働者保護の法整備進まず テキサスでは議会が規制導入阻む法案を可決

2023年9月19日(火)11時33分
ロイター
屋外作業中に水分を補給する労働者

記録的な猛暑に襲われた米国。だが、農場や建設現場のように厳しい環境で働く人たちが暑さを逃れるすべはほとんどない。写真は8月、テキサス州ヒューストンで、屋外作業中に水分を補給する労働者(2023年 ロイター/Adrees Latif)

記録的な猛暑に襲われた米国。だが、農場や建設現場のように厳しい環境で働く人たちが暑さを逃れるすべはほとんどない。健康どころか生命にさえ関わるリスクがあるのに、休憩を取れない、あるいは休憩することをためらってしまう例も多い。

啓発団体によれば、米国において気候関連の死因として最も多いのが酷暑であるにもかかわらず、労働者の保護が欠落している状況が広く見られるという。水分補給や日射しを避けるための休憩を取れないことが、より深刻な症状や死亡の原因になっている。

テキサス州オースティン在住の5児の母親、エバ・マロカンさん(50)は、建設や清掃などの現場で働いているが、気温の上昇に対して自分の身を守れないと感じることが多い。

今年は状況がひどく悪化した、とマロカンさん。脱水症状を起こして医師の診断を受けなければならなかったことや、最近エアコンのない住宅での作業後に咳が止まらなくなったことを語ってくれた。

だが、仕事を休めば済むとは限らない。

移民労働者の権利擁護に取り組む「ワーカーズ・ディフェンス・プロジェクト」のメンバーでもあるマロカンさんは、「仕事を休みたくない場合もある。責任もあるし、顧客の了解を得られるとは限らない」と言う。

「自分は母親であり、そういう仕事の給料で食いつないでいる。働くのをやめたら誰が私の代わりに稼いでくれるのか」

米国の州のうち、労働者のための具体的かつ包括的な暑さ対策を法制化しているのは、カリフォルニアやコロラド、ミネソタ、オレゴン、ワシントンなど、全体の10分の1程度の州にすぎない。しかも、労働問題の啓発活動家によれば、そうした各州の対策も道半ばだという。

こうした労働者保護のための規制はコスト増につながり、ビジネス上の負担になるとして、業界団体が反発した例もある。

労働省労働統計局によると、2011年から21年にかけて、暑さにさらされる環境を原因とする労災死亡事故は436件だった。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、1人死亡 エネ施設

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中