酷暑続いた今年の夏、労働者保護の法整備進まず テキサスでは議会が規制導入阻む法案を可決
ワーカーズ・ディフェンス・プロジェクトの関連団体であるテキサス州拠点の啓発団体「ワーカーズ・ディフェンス・アクション・ファンド」で州議会対応を担当するダニエラ・ヘルナンデス氏は、「働く人が死なずに済むにはどうすればいいか、という問題だ」と語る。
失職を恐れる労働者
カリフォルニア州は2005年から、屋外で働く労働者のために、水分補給や日射しを避けるといった具体的な暑さ対応ルールを導入している。だが活動家らは、現在策定中の屋内労働者を対象としたルールなど、さらなる改善を求めている。
だが一般論として、こうした法律には限界がある。たとえばコロラド州では、法令の対象は農業労働者に限定され、ミネソタ州では屋内労働者しか対象としていない。
オレゴン州は昨年、新たに恒久的な法律を施行し、気温が華氏80度(摂氏26.7度)以上となった場合、屋内・屋外にかかわらず、労働者が簡単に日射しを避け水分を補給できるようにすることを義務づけた。
さらに、気温が華氏90度(摂氏32.2度)になったら、雇用主は実働2時間ごとに10分間のクールダウン休憩を実施しなければならない。
だが、すべての労働者がこの法律による変化を感じているわけではない。ポートランドを拠点とする「ノースウェスト・ワーカーズ・ジャスティス・プロジェクト」に参加するケイト・スーズマン弁護士によれば、ルールを無視する雇用主を、政府の労働安全衛生局(OSHA)に通報することをためらう人もいるという。
スーズマン弁護士はトムソン・ロイター財団に対し、「労働者は、仕事を失うことをひどく恐れている。だから、連邦政府であれオレゴン州政府であれ、当局に協力することにはリスクが伴う」と語った。
2021年、命に関わるレベルの「ヒートドーム」(高気圧の気団)により、平年であれば過ごしやすい太平洋岸北西部とカナダの一部地域で最高気温記録が更新されたことを受けて、オレゴン州と隣のワシントン州は、暑さ対策に関する既存の規制を強化する、あるいは新規に導入するという対応を見せた。
オレゴン州議会は今年、違反者に州が課す罰金やペナルティーを重くし、労働者に「危険な」業務を拒否する権利を与える法律を可決した。
ワシントン州では、日射しを避け、水分補給ができるようにすることを義務づける恒久的な屋外暑さ対策ルールが7月に施行された。基準となる気温は華氏80度(摂氏26.7度)、「通気性のない」服を着ている労働者については華氏52度(摂氏11.1度)となっている。
環境問題に取り組む非営利団体(NPO)「自然資源保護協議会(NRDC)」のメンバーのジュアニータ・コンスティブル氏は、暑さが労働者に与える脅威は「あまりにも過小評価されている」と語る。
コンスティブル氏が共同執筆者に名を連ねた2022年の報告書では、企業数百社がカリフォルニア州の暑さ対応基準に繰り返し違反したにもかかわらず、本来であれば常習違反者に科される追加の罰金を免れていたとされている。この調査によると、ペナルティーが大幅に軽減される、あるいは完全に免除された事例もあったという。
コンスティブル氏はNRDCの気候・健康専門家で、「暑さを原因とする症状の多くは比較的軽症で、応急処置で済んでしまうし、長期にわたって仕事を休む必要もない。だからこんな風に、たいした問題ではないという意識が生まれてしまう」と語った。