最新記事
自己啓発

不当な解雇通知はカネになる 2社から4700万円勝ち取った会社員、円満退社を可能にした「バックペイ」とは?

2023年7月18日(火)18時00分
佐藤大輝(ブラック企業元社員) *PRESIDENT Onlineからの転載

「解雇の撤回」を主張すべき理由

私が裁判で請求したのはシンプルに一点のみ。解雇の撤回だ。これは言い換えるなら「私は解雇されていない。今も従業員のままだ」と主張するのと同じ意味を持ち、つまり裁判期間中に支払われるはずだった賃金を請求できる。また、解雇無効が認められた場合、解雇されていなかったことに経歴が修正され、復職の権利も手に入る。

これは「地位確認請求」と呼ばれるもので、地位確認が認められると企業にとって大きな痛手となる。なぜなら解雇無効が法的に認められた場合、まとまった金銭の支払い義務が企業側に生じるからだ。

「解雇時の給与(月給)×紛争期間(月)=企業側の支払う金額」

 
 
 
 

上記の計算方法で算出した金額が、和解あるいは判決の際、企業側が支払う金額設定の一つの目安、判断材料になってくる。専門用語で「バックペイ」(民法第536条第2項)と呼ばれるこの支払いは、労使共に覚えておいて絶対に損はない。

企業からすると「ノーワーク・ノーペイの原則」を主張したいところだが、残念ながら「会社に貢献していなかった」という事実は関係ない。なぜなら会社の誤った判断のせいで「働きたくても働けなかった」からだ。よって地位確認が認められた場合、解雇していなければ支払っていたであろう給与を全額遡って支払う義務が企業側に生じる、というわけだ。

「絶対に判決は避けたい」という状況に持ち込む

勘のいい方はお気付きかもしれないが、バックペイは長く争えば争うほど高額になる。企業側は「あんな問題社員に負けてたまるか」といった感情論ではなく、損得を合理的に計算する勘定論で、原告との戦いを慎重に進めなければならない。

一方で訴える側にとっては、「いかにして会社にとっての脅威になるか」という考え方で争うことが弱者の生存戦略として有効であることをお伝えしたい。多くのサラリーマンは「真面目に頑張って働いて、結果を出して、良い評価を得れば待遇が上がる」と考えがちだ。

しかし、「不真面目で解雇されるくらいの問題社員だが、復職したら会社に大損害を与える力を持っているので、絶対に判決は避けたい」といった状況に持ち込むことができれば、おのずと和解金額は上がるのだ。なぜなら会社側からすると、いくら払ってでも退職させたい迷惑極まりない存在だからである。

これら「法的知識」と「性格の悪さ」に加え、裁判期間中に「交渉術」の知識を学んだ私は、裁判序盤~最後まで「4000万円の賠償金を支払うなら和解(円満退社)する。支払わないなら判決(バックペイ+復職)で構わない」と一貫して主張し続けた。

インタビュー
現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中