育休の欠員をどうカバーする? 「助成金を使う」という手もある
■4:負荷がかかる社員のケアを忘れない
家庭と仕事の両立に励む社員がいる一方で、独身や子供をもたない社員には、欠員の負担のしわ寄せがきやすいことを忘れてはいけません。特定の社員への負荷が大きくなると、「独身は損している」といった不満や、育休を取得する社員へのマタニティーハラスメント(マタハラ)につながる恐れもあります。面談時ではこの視点から業務量についてヒアリングをしたり、頑張りを評価等に反映したりと、メンタルや待遇面で配慮するようにしましょう。
復職する社員の取り扱いの注意点
育児休業を取得する社員は、これまでの仕事生活とは全く異なる環境に置かれながら生活をしている状況になります。したがって、復職する際にはさまざまな不安を抱えたり、復職後も育児休業取得前のようなペースで業務をこなすことができず、悩んだりするケースが考えられるでしょう。このような状況を防ぎ、復職した社員が安心して働くことができるようにするためにも、以下の点を心がけましょう。
■1:育休中の社員とコミュニケーションをとる
会社側は社員が育児休業を取得している時期から、積極的にコミュニケーションを取っておくことが重要です。定期的に会社の状況や社内異動や入社・退社情報などを知らせることで、社員は自分が忘れられていないということを実感することができるでしょう。
また、育児休業を取得中に、今後のスキルアップのために何らかの資格を取得したいという考えを持つ社員も中にはみられます。このような場合に対応するため、教育プログラムの紹介やOA機器を貸し出す制度を組み込む方法も有効となるはずです。昨今ではコロナ禍の影響もあり、在宅でさまざまなスキルアップをするための取組みが実施されていますので、会社の業態や規模に応じて、最新のスキルアッププログラムを調べておくとよいでしょう。
■2:復職前に希望の働き方をヒアリングする
実際に社員の復帰が迫って来た時期には、復帰後の働き方について事前に話し合う必要があります。意見の相違がないよう、メールやSNSではなく、直接・オンラインによる面談を実施し、互いの顔が見えるような状況で話し合うことでトラブルを防ぐことができるでしょう。
育児休業前とは社員が抱える状況が変わっていることもあるため、会社側では今後実際に職場復帰をした際に希望する働き方をヒアリングし、社員が無理なく業務を進めることができるような配慮を行う必要があります。
復職前とは部署を異動させた方が良いのか、業務内容はどうするか、短時間勤務の希望や残業を希望しない旨の申し出があるか否かを、一つずつ丁寧に確認していきましょう。
■3:復職後の労働条件や働き方に注意する
育児休業から復帰した社員を本人の意思に反して降格させたり、給料額を減らしたりすることは労働条件の不利益変更とみなされ、トラブルにつながる恐れがあります。また、3歳に満たない子供をもつ社員が要望した場合、会社は所定労働時間を超えて労働させてはいけないと育児・介護休業法で定められていますので、希望があれば対応が必要です。復帰後の社員に認められている権利についても把握しておくことで、復職後の社員が安心して働けるようにしましょう。
まとめ
社員が安心して育児休業を取得し、復帰できるような環境を整えるためには、会社が常日頃から社内の業務内容を把握し、常に効率化を考えた業務フローを整えておく必要があります。特に社員の残業が常態化している職場の場合、欠員が一人生じただけで周囲の社員にはかなりのダメージが与えられる危険性があります。社員一人ひとりの業務内容が適正かどうかを見直し、職場のモチベーションが低下しないような対応策が求められるでしょう。
【参考】
『両立支援等助成金』/ 厚生労働省
[執筆者]
加藤知美
エスプリーメ社労士事務所 社会保険労務士
愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に個人事務所を設立。総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。
2021.11.24